菊池 前職ではフリーペーパーの編集を行っていました。しかしリーマンショックなどの影響で、フリーペーパーが発行できなくなり、自分のやりたい仕事ができなくなったので、思いきって退社を決意しました。次に働く所を探している時、元同僚が「ある出版社が営業を探しているから、面接を受けてみたらどうか?」と声を掛けてくれて、そこがアスコムでした。
――書店回りで印象に残っていることや失敗したご経験は?
菊池 書店さんから信頼が実感できたことが印象に残っています。自社の情報だけでなく書店さんの売り上げにつながったり、必要だと思った情報などを伝えることによって、「菊池さんに聞けばわかるね」「菊池さんが言うんだからやってみよう」と言っていただけました。うれしくて今でも覚えていますね。
失敗したことは、書店さんにとって来てほしくない時間に訪問してしまったことです。お店がオープンして本の陳列などをしている午前中や、12時から13時の間、一番混む17時以降は特に忙しいんです。当初はそれが分からず、書店さんにご迷惑をかけてしまいした。その後は、担当の方のお休みや都合のいい時間帯を聞いてからお伺いするようにしています。
――大手と競争する際のコツはありますか?
菊池 一番は書店さんにこまめにお伺いすることです。「気にかけている」ということを知っていただけますし、責任を持って担当しているというアピールが大事だと思います。そうすることで書店さんも目立つ場所に商品を置いてくれたり、追加注文をくれたりしてくれます。
――1冊の本を作る際に、営業と編集でコミュニケーションを取ったりしますか?
菊池 はい。弊社の場合ですと、1冊の本に対して、営業と編集が1人ずつタッグを組んで、対象の客層、店舗、冊数など、企画の段階から戦略を立てます。ただ、2人だけで進めると考えが偏ってしまう恐れがあるので、ミーティングなどで他の人の意見も聞いています。書店さんに相談することもありますね。弊社では、みんなで本づくりを行っているということで、奥付に全員の名前を入れています。そして担当した営業・編集の二人は一番上に名前が載ります。これは社員のモチベーションにも繋がっていますね。
――これまで、どのくらいの本を担当されましたか? また、これまで一番売れた担当した本は何でしょうか?
菊池 これまでは30点くらい担当しました。一番は、今も売れ続けていますが、『医者に殺されない47の心得』という本で88万部以上売れています。ぜひミリオンを目指したいですね。
――売れている理由は何だと思いますか?
菊池 内容はもちろんですが、著者の影響力も大きいと思います。それから、タイトルのインパクトでしょうか。あとは、ひたすら書店営業活動と新聞広告です。新聞広告は、徹底的に効果を調べて掲載をしました。
また、父の日などのイベントも意識しました。男性が気にしそうな項目や、読者感想なども盛り込んで父の日専用の拡材を作り、父の日の3週間くらい前から店頭で準備しました。
――ほかに担当した本で売れたものはありますか?
菊池 『病気にならない! たまねぎ氷健康法』が19万部突破しました。この本はテレビの取材が入ることになり、重版、新聞広告など全てのタイミングを合わせて認知度をガッと上げました。店頭POPにも「テレビで紹介されました」と入れることで、さらに売れるようになりました。
――仕事をする上で心掛けていることは?
菊池 書店さんを一番に想うことが大事ですね。さらに、常にクリエイティブな発想を持つことです。この業界は流行り廃りがありますので、常に新しい目を持ち続けて仕事をしたいな、と思います。
――他社にない強みはどんなところでしょうか?
菊池 店頭を盛り上げていただくためにPOPに力を入れています。目を惹くデザインやアイデアのものが多いので、使ってもらいやすいですね。それから、新刊に関しては、売り伸ばしのデータを取るため、“仕掛け店”を作っています。“仕掛け店”は本の内容やターゲットによって店舗を変えています。
――社内でコミュニケーションを取るために何か試みはありますか?
菊池 営業同士のコミュニケーションも図るため、毎週月曜日の17時から打ち合わせをしています。そこで、書店での動きや売れている本の傾向など、常に情報共有をしています。仕事の後に飲みに行くのはしょっちゅうですね。
――将来の夢は何でしょうか?
菊池 業界の誰もが知る営業ウーマンになりたいです。かつ、働くママになりたいです。特にこの業界は、女性が働き続けるのが難しいと言われていますので、先陣を切って活躍していきたいですね。
(文=風間立信/表参道総合研究所)