出版関連業種としては、書店と製本業者の廃業が相次いでいる。2012年8月12日付「東京新聞」の『増える 書店ゼロの街』という記事は、地方や郊外で書店が急激に姿を消している現状を紹介したが、それから1年足らずで、「状況はさらに悪化したことは確実」(同)という。
製本業者の廃業も深刻だ。「教科書や新刊本が集中する4月頃までは忙しいが、5月を過ぎるとパッタリ仕事がなくなる。特に社員数20人以下の零細企業は厳しい」(業界関係者)とのことだ。
本をつくる業者も減り、本を売る店舗も見かけなくなるという現状は、ますます日本人の本離れに拍車をかけているようだ。「ネット書店で買えばいい」という声もあるが、すべての人々がパソコンやスマートフォンを持っているわけではない。
●本が売れなくても書店は儲かる?
そうした状況で、「本が売れなくても、書店が儲かる」というシステムが存在していることは、あまり知られていない。
いわゆる自費出版だ。自費出版を専門的に手がける出版社では、著者から受け取った代金の一部で書店の棚を確保する。そして棚を借りた“借り賃”を書店に払うわけだ。書店は配本されてきた本を棚に並べておくだけで、たとえ1冊も売れなくとも、売り上げが上がるというわけである。
しかしこの方法は、書店にとって売り上げ低迷の抜本的な対策には到底ならず、自費出版での棚貸しを嫌う書店チェーンもあるという。それでも、売り上げ悪化から少しでも収入を増やそうと、このシステムやめられない書店もあるとのことだ。
出版は製作から流通まで、多くの人や業者が介在する。その大きな出版業界の中で、書店や製本業者といった一部が崩れつつある現状は、いよいよこれまでの“業界の在り方”が維持できなくなる前兆と見る関係者も多い
(文=橋本玉泉)