ダ・ヴィンチは締切を守らない天才だった。
ピカソは女好きで有名だった。
ルソーは南国の美女にメロメロだった。
歴史に名を残した画家たちの性格や性質に奇抜な一面があったことを知ると、なんとなく身近に感じられたり、興味を持って作品を見ることができたりする。さらには画家たちが活躍した時代背景まで視野を広げると、より美術史は面白くなる。
そんな美術の魅力を伝えるネットラジオ「そんない美術の時間」を書籍化したのが『大人の雑学 西洋画家事典』(らちまゆみ著、ワニブックス刊)だ。本書では、ルネサンス期から20世紀までの約500年間に活躍した35人の画家たちの活躍を歴史的な背景とからめて紹介する。
納期を守らないレオナルド・ダ・ヴィンチ
画家としての成功だけでなく、建築学、天文学、植物学、工学、そして解剖学に航空力学と多才な才能を持ったレオナルド・ダ・ヴィンチ。婚外子として複雑な家庭環境に生まれたレオナルドは、幼少期にあまり教育を受けておらず、その才能はほとんど独学によるものだったという。
20代後半に工房から独立し、フィレンツェ、ミラノと活動の場を移しながら制作を続ける。実はあまり絵が売れなかったという一面もある。現存するのはわずか数十点と、当時あまり受注を受けていなかったことが想像できる。実は、あまりに完璧主義だったため、作品を描くのが遅く、「上手いけれど、納期を守らない人」だったようである。実際に、前金をもらっていたのに「いつまでも完成しない!」と裁判沙汰になったり、人間関係でも融通がきかなかったりと、天才ゆえに生きづらさを抱えた人物でもあった。
奇抜な独自ルールを持ったダリ
溶けたような時計とアリの集合体が描かれた『記憶の固執』は、サルバドール・ダリが20代の頃に描いた代表作。インパクトの強いビジュアルと作品世界という独自性を武器に、20世紀というアートの転換期にシュルレアリスムの画家として、インパクトのある役回りをした人物でもある。
ダリはこれまでの常識を覆していくために、独自の理論や描き方を持っていた。たとえば、夢と無意識を題材とするために「夢を制御する3つのルール」を課し、自ら夢を制御しようと試みる。1つ目は香水。いくつかの香水を用意し、嗅いで眠ることでその香りにまつわる過去の思い出を思い出し、夢をコントロールできるというもの。2つ目は音楽。香水と同じメカニズムで、音楽で夢をコントロールする。3つ目は光。目に強い光を当てることで、カラーの夢が見られるというもの。
この夢を制御する3つのルールのほかにも、全部で50もの独自理論に基づいた秘伝があったという。
学校では教えてもらえなかった西洋画家たちのエピソードは時代背景が読める本書。Webラジオ「そんない美術の時間」と合わせて美術の歴史を楽しんでみてはどうだろう。(T・N/新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。