まだまだコロナ禍は収まっていないとはいえ、送別会シーズンということで、お酒を飲む機会が増える今の時期。
「お酒は節度を守って」と言われるが、ついつい飲みすぎてしまって翌日二日酔いになったり、電車を乗り過ごしてしまったり、はたまた誰かに暴言を吐いてしまったり、お酒の失敗で後悔することは何歳になってもあるものかもしれない。
それもそのはず、「なぜお酒に酔うのか」「お酒に強い・弱いとは何なのか?」「なぜ二日酔いになるのか」などなど、お酒が体にもたらす影響は、なんとなくはわかっていても正確なことはあまり知られていない。
「お酒が強い人」と「お酒が弱い人」は何が違うのか?
『名医が教える飲酒の科学 一生健康で飲むための必修講義』(葉石かおり著、浅部伸一監修、日経BP刊)は、わかっているようでわからないお酒にまつわる疑問に対して、専門医が答える一冊。
たとえば酒には「強い人」と「弱い人」がいる。いくら飲んでもケロッとしている人がいる一方で、少量でも気分が悪くなってしまったり、眠くなってしまう人も。酒の強さは体質なのかと思いきや「飲んでいるうちに強くなった」という人もいる。
「アルコールの分解能力の違い」ということは何となく知っていても、体に入ったアルコールがどう吸収されていくのかまでは、知らない人が多いかもしれない。
体に入ったアルコールは胃や小腸で吸収され、主に肝臓で分解され「アセトアルデヒド」になり、そこからさらに代謝されて「酢酸」になる。本書によると酒の強さはこのアセトアルデヒドの分解能力で決まる部分が大きいのだそう。この分解が遅い体質の人は、少量の飲酒でも顔が赤くなったり、吐き気がしたりする。
アセトアルデヒドは人体に有害な物質なため、分解が遅いということはそれだけ体内にこの物質が長くとどまるということ。人体に無害な「酢酸」にいかに早く代謝できるかが「お酒が強い・弱い」にかかわってくるのだ。
「飲んで肝臓が鍛えられた」の正体
では、「もともとあまり飲めなかったが、飲んでいるうちに強くなった人」は、お酒を飲み続けることでアセトアルデヒドの分解能力が強化されたのだろうか?
実はそうではない。あまり知られていないがアルコールを代謝する経路は二つある。
一つは「アルコール脱水素酵素とアルデヒド脱水素酵素」が使われる経路。先述の「アセトアルデヒドの分解が遅い体質の人」は遺伝的にアルデヒド脱水素酵素の働きが低いことが多いのだとか。
ただ、そういう人でもお酒を飲み続けていると「MEOS(ミクロゾーム・エタノール酸化酵素系)」という体内の酵素群が誘導されて、アルコールの代謝に使われるようになることがある。これが第二の経路。こうなると次第に酒が強くなっていくという。これが俗にいう「飲んでいるうちに肝臓が鍛えられた」の正体である。
ただ、飲むことで飲めるようになった人は、飲まない日が続くと元の強さに戻ってしまう。このあたりが「もともと強い人」と「鍛えて強くなった人」の違いということだろうか。
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本書では、この他にも二日酔いのメカニズムや、飲酒の影響を受けやすいがんの部位、「糖質ゼロビール」はどのように糖質ゼロを実現したのか、減酒を考えたほうがいい人のタイプなど、お酒が好きな人が興味を持つ話題や、ギクッとする話題が目白押し。
ほどほどに楽しく、がお酒を楽しむ秘訣。「友」にも「敵」にもなるのがお酒だが、どちらにするにしても、まずは相手を知ることから。本書はそのために一役買ってくれるはずだ。(新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。