–なるほど。欧米ではイメージコンサルティングなども盛んだと聞きますが、日本ではまだまだ認知度や意識も低いと思います。日本人男性は外見に対し、どのように気を配ればいいのでしょうか?
里岡 日本の男性は、価値観にせよアピアランス(見た目)にせよ、右に倣え……いや、右に倣えならまだいいんです。実は、そこにも満たない人が、まだいらっしゃるのが現状です。自分の見た目に興味を持たないんですよね。とてももったいないことです。ちょっと変えるだけ、ほんのちょっとほかの人より工夫するだけで、ぐーんと印象度ってアップするのに。ただ間違った変え方をしてしまうと、かえって印象を悪くしてしまうので(笑)、それも問題なんですが。ですから、客観性をもって自分を見るということが大事なのではないでしょうか。
–客観性をもって自分を見るというのは、実はなかなか難しそうなことですね。どうすればいいのか、ポイントはあるのでしょうか?
里岡 『誰からも〜』にも書きましたが、物事を感情ではなく理性でとらえることですね。自分が好きということだけではなく、周りのみんなもそれを好きかどうか。自分の感情の赴くままに好きなものだけで埋め尽くすのではなく、どういう時間にどういう目的でどういう人と会うのか。それを踏まえた上で、自分を仕立てるんです。
–なるほど。そのときに注意すべきことなどは?
里岡 極端にやりすぎて浮いてしまわないようにという点には、注意を払わなければなりませんね。例えば香りひとつにしても、パーティーなど華やかで、それが浮かない場所であれば、どんどん香りをまとわれていいかと思います。ただビジネスでもそれをやってしまうと……。男性にはさじ加減が難しいんですよね。
●小泉元首相の知られざるエピソード
–日本の男性のVIPで、接遇されて印象深かった方はいらっしゃいますか?
里岡 小泉純一郎元首相でしょうか。彼は、人のハートを素晴らしくキャッチされますね。彼の政治をご覧になられても感じられるでしょうが、印象的な言葉がすぐに出てくるんですよね。コピーライターではありませんが、一瞬にしてハートをつかむフレーズがぽんと出てくる。
例えば「おー! すごいねー!」。まず最初にそんな言葉が出る。そして何がすごいかは、そのあとに続くんですよ。それで、相手のことをよく見ていらっしゃるんですよね。その上での「すごいね」なんですよ。私が、以前接遇した記憶をもとに、小泉元首相がお読みになるだろう新聞を選んだ。そこに「すごいねー!」と褒め言葉を投げかけられるのは、私の行動を見てくださっていたからこそですね。でないと、何が優れていたのか、フィードバックすることはできません。すると、こちらとしては「見てくださっているんだな」という喜びがある。また、そういったお言葉を惜しみなくいろんな人にかけることができるのも素晴らしいです。サービス精神が旺盛でいらっしゃるんでしょう。だって「(元)首相に言われた」ことが、みんなの喜びになるわけですから。
–あれだけ支持されてきたのもうなずけるエピソードですね。
里岡 そうですね。人気があるだろうなと思わされます。トップとして人の上に立てる方なんですよね、やはり。でも人の上に立つ方、みんながみんな、あのような方かというと、残念ながらそうではない。やはりそんな方々の中にあっても、抜群にイメージがいいんです。
–そういったVIPを接遇されてきて、里岡さん特有の工夫は何かありましたか?
里岡 お客様のお好みなどを記した「気配りノート」というものをつけていました。お客様相手のお仕事ですから、お好みの食前酒が通常あまり置かれていないものにもかかわらず、それが出てきたとしたら、やはりうれしいものでしょう?
また人とのコミュニケーションで工夫してきたのは、「3」のタイミングを意識することですね。お手紙やお電話などは3日以内に差し上げたり、3週間、3カ月といったタイミングを意識したりしてきました。
●日本人男性に求められること
–小泉元首相という日本人男性のVIPに話が及びましたが、若手ビジネスパーソンの男性たちに求められるものはなんでしょうか?
里岡 アピアランスの部分ですね。服に限らず、臨機応変さに欠けるように感じます。その点は割と女性のほうが得意なように思います。今の日本女性はアクティブだし、いろんなことに対応しやすいグローバルなところもあって、いいのではないでしょうか。
『「また会いたい!」と言われる女(ひと)の 気くばりのルール』 気くばりができる人は、「気づける」人です。 実際にどのように考えて動けば、押しつけがましくなく爽やかに気が利く人と思われるようになるのか、気くばりの基本から実践までを元トップCAが教える。
『誰からも好かれる女(ひと)の 人と運を引き寄せる習慣』 「気くばり」本の里岡さんが、トップCAになるまでに心がけてきた仕事の習慣や、空の上・多彩な交流の中で出会った一流の人の一流たる言動を彼女ならではの柔らかな視点で説く。