つまり、これから必要とされるのは、大学名やポテンシャル、まして出身高校などではなく、大学で何を成し、そしてこれから何を成せるかという、きわめて現実的なものとなるはずです。
では、具体的に何を成し、どうキャリアにつなげていくべきでしょうか。仮に筆者が大学1年生で、将来は企業の管理部門でキャリアを積みたいと考えたとします。といっても、まだまだ具体的に企業や職種の内容まではイメージできませんから、とりあえず労働法、商法関係を中心に授業を選択する程度でしょう。入り口としてはそれで十分です。
加えて2年生くらいからインターンシップで管理部門をいくつか経験させてもらい、理論だけではなく現場レベルで肉付けします。「インターンなんて、そう簡単にさせてもらえるの?」「まして管理部門でしょ?」と思う人もいるでしょうが、まさに今、そういう意欲の高い学生に複数の企業の内定が集中しているのが現実であり、業種や規模を問わなければチャンスはあるはずです。
そして「現在の労働法制と企業労務管理とのかい離」「今後、あるべき労働法制」をテーマに論文を書けば、卒論としてもそれなりに意義あるものができるでしょうし、採用面接において、企業側からも高く評価されるに違いありません。少なくとも筆者が面接官なら「リクルーターが引っ張ってきたへらへらした有名大学の学生」よりも、そうやって成果と可能性を感じさせてくれる学生を採用します。おそらく、たいていの一流企業の人事担当者は筆者と同じ意見のはずです。
自分で目標を定め、そのために授業をフル活用し、就職にもそれを生かす。本来の高等教育のあるべき姿であり、これから日本社会が緩やかに進む方向だと、筆者は考えています。
●「出身高校名をチェックしている」企業は避けたほうがいい
最近「新卒や中途の採用選考に際し、出身高校名をチェックしている企業がある」という話題をちらほらと耳にします。理由は単純で、少子化と学部増設により、学歴と質が釣り合わない学生が増えているため、出身高校名で二重に質のチェックをかけているわけです。
例えば、全然名前を聞いたことがない高校から“超難関”といわれる大学に進んでいる学生が「推薦やAO入試で入学したかもしれず、ポテンシャルは低いのではないか」と疑われたりするのです。大学が学生をたくさん入学させることで経営的に楽になることを選び、結果として学生の質が下がり、卒業証書を持っている人たちが迷惑するという「学歴のリフレ政策」みたいな流れになっているのです。
では、出身高校が有名進学校でなければ、就活や転職で肩身の狭い思いをするべきなのでしょうか? いいえ、むしろそのように出身高校名でしか人物評価できない企業にはオサラバしろ、というのが筆者のアドバイスです。