2013年12月5日、世界中から惜しまれつつ亡くなったネルソン・マンデラ。今年に入って日本でも2つの映画が公開、書籍も多数刊行されるなど、今なお人々から大きな尊敬を集める人物である。
そんなマンデラの南アフリカ大統領就任という歴史的瞬間に立ち会い、人生と勇気について昼夜語り合い、2年間寝食を共にした米タイム誌編集長リチャード・ステンゲルが、マンデラの「リーダーシップ」に焦点を当てて書いた『信念に生きる――ネルソン・マンデラの行動哲学』(グロービス経営大学院、田久保善彦/訳、英治出版/刊)という本がある。
アパルトヘイトとよばれる人種隔離政策と戦い、27年間獄中で自由を叫び続け、理想の社会の創造に向けて奮闘したマンデラ自身が開発してきたリーダーが持つべき要素を、本書では「リーダーシップ15箇条」として紹介している。
一、勇敢に見える行動をとれ
二、常に冷静沈着であれ
三、先陣を切れ
四、背後から指揮をとれ
五、役になりきれ……
こういった「リーダーとしてのあるべき姿」を、著者がマンデラと生活をしていた当時に書き綴った12万語の日記をもとに紐解いていく。ここでは「リーダーシップ 15箇条」のなかから、「勇敢に見える行動をとれ」をご紹介しよう。
■「勇敢さ」をはき違えるな
リーダーとしてのマンデラ、というと皆さんはどんなことをイメージされるだろうか?
自分の信念を成し遂げるために、恐れることなく邁進し続けた勇敢な人、と思われるかもしれない。だが本書を読んでみると、日々数えきれないほどの恐怖に震え、自分の弱さを痛感してきたのだとマンデラは言うのだ。
恐れを感じないことは愚かであり、恐れを感じたうえで、それに負けず確固たる自己を失わないこと。無理に勇敢である必要はなく、勇敢に見える行動をとって物事に立ち向かってみることが大切――これがマンデラの「勇敢さ」の定義である。
仕事をするなかで、何かの決断を迫られたり、逆境に苦しんだりしたことは誰もが一度はあるだろう。そんなとき、あなたは「リーダーたるもの勇敢であれ!」と自分を鼓舞しただろうか。だがそういう状況でマンデラなら、きっとあなたにこう言っただろう。「恐怖や不安を感じていい。勇敢でなくていい。物事に立ち向かってみる、その行動こそが『真の勇気』である」と。