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山崎元「耳の痛い話」(1月10日)

かわいそうな日本の管理職?圧倒的な権限のなさ、辟易する面倒さ…いつでも取り替え可能

文=山崎元/楽天証券経済研究所客員研究員、マイベンチマーク代表
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 レポートラインとは、自分がどの上司の指示に従い、報告の義務を負うかという系統のことだ。常識的には、自分の「ボス」はレポートライン上の上司のみであり、レポートライン外の人々は日本的にいう「上の人(偉い人)」も含めてすべて「同僚」である。

 マネージャーは、端的にいって「いくら儲けるか」の予算目標(「バジェット」などと称する)に対して責任を負う。バジェットを達成したらたっぷりボーナスをもらい、達成できなければマネージャー自身がクビ。これが原則とまでいわないが、基本的な考え方だ。もちろん、バジェットを達成しても、もっと有望だと上司が思うマネージャーとすげ替えられることがあるし、未達でも再びチャンスをもらえることもよくある。当該ビジネスをよく知っている「代わり」の人材を見つけるのは大変なので、さすがに後者のケースはよくある。外資志望の方はある程度は安心してよい。

 マネージャーが雇っていい部下の人数上限をヘッドカウントと称し、会社はコストとマネジメント管理の手段として、ヘッドカウントを使う。外資系企業では、時に「ヘッドカウント・フリーズ」と称する新規採用のストップが発動されるので、転職活動中の方は注意されたい。ただし、サイン入りのオファーレターを持っていれば大丈夫だ。

●マネージャーの人事権

 日本企業と大いに異なるのは、マネージャーの人事権の内容だ。原則として、使いたい部下を採用し、クビにしたい部下をクビにすることができる。もちろん、一応はフェアな理由がないとマネジメントがうまくいかなくなるが、部下を評価しボーナスを決定する。バジェット以上の利益貢献が達成されるようならば、ヘッドカウントも予算も増えて、儲かる部署・儲けられるマネージャーに多くの経営資源が配分されるし、そうでない場合は、マネージャーが取り替えられたり、資源配分が減ったりする。いわば、企業への利益貢献をシグナルとして、個々の専門化されたビジネスが個々のチームで処理されて、ネットワーク的に会社が組織されていると見ることができる。

 これに対して日本の大企業は、情報と判断を中央集権的に経営幹部に集めて経営資源の配分を行おうとするので、例えば官公庁のような環境が変化しないビジネスの場合に堅実な面がある一方で、金融やIT関連のような専門化と速いビジネス環境変化とが組み合わさったビジネスにあっては、環境適応が遅れがちだ。

 外資系企業のやり方は「血も涙もないやり方だ」と思われるかもしれないが、実感としては、オフィスでは大いに血と涙が流れている。しかし、ゲームのルールとしては、フェアであり合理的な面がある。

 今回述べたような外資系的マネージャー像が、すべての日本企業にただちに拡がっていくわけではなかろうが、ビジネスのグローバル化、環境変化のスピードアップ、人材の流動化を考えると、方向性はこのようなものだろう。
(文=山崎元/楽天証券経済研究所客員研究員、マイベンチマーク代表)

山崎元/楽天証券経済研究所客員研究員、マイベンチマーク代表

山崎元/楽天証券経済研究所客員研究員、マイベンチマーク代表

経済評論家。楽天証券経済研究所客員研究員。(株)マイベンチマーク代表取締役。1958年北海道生。1981年東京大学経済学部卒業、三菱商事に入社後金融関係の会社に12回の転職を経て現職。資産運用を中心に経済一般に広く発言。将棋、囲碁、競馬、シングルモルト・ウィスキーなどに興味
評論家・山崎元の「王様の耳はロバの耳!」

Twitter:@yamagen_jp

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