「国内のテロ組織が、漁業を装って、この位置に魚網を仕掛け、スクリューを巻き込ませるなど、自衛隊を標的としたさまざまなテロ行為の可能性が考えられる。つまりこの写真は、Facebookに投稿されてはいけない代物。しかもこの広島湾の那沙美の瀬戸は狭水道なので、航行するときに、こうした写真が撮影できるのは艦長、副長、甲板士官くらいしか考えられない」
安全保障上の問題があるばかりではなく、勤務時間中に写真撮影を行っていた疑いは濃厚だ。このほかにも、護衛艦「はたかぜ」のエンジンルーム、艦砲射撃の写真もあわせて投稿されていた。「はたかぜ」のエンジンルームも「詳細は話せないが、外部に出してもらっては困る」(元海上自衛隊幹部)写真だという。
犯人はなんと現役護衛艦艦長
この写真を投稿していたのは、護衛艦「はたかぜ」副長兼砲雷長・「S」2等海佐と名乗る人物とされている。昨年12月からは舞鶴の第14護衛隊所属、護衛艦「みねゆき」艦長を務める、れっきとした現役幹部自衛官である。
はたしてこれら一連の投稿は、本当に護衛艦「みねゆき」艦長・「S」2等海佐のよるものなのか? 直接、話を聞こうとコンタクトを取ったが、回答を得ることはできなかった。
この「S」2等海佐のFacebook投稿は、昨年12月に護衛艦「みねゆき」艦長に就任後、さらに頻度が増した。その投稿内容は、自衛隊にあまり詳しくない人がみても、安全保障上、なにがしかの問題があるのではとの疑念のある内容ばかりだ。
例えば他のFacebookユーザーからの質問に応じて「護衛艦の復元性は強く、90度+○○度傾いても沈みません」とコメント。この書き込みにより、「日本の護衛艦の復元性は90度+○○度」という、「日本の安全保障上、外部に知られてはいけない情報」(現役自衛官)を公表してしまったのである。
また、「S」2等海佐が1月に実施された輸送艦「のと」の(海岸へ艦を離着岸させる)ビーチング訓練に参加した際は、「輸送艦は陸上から約200メートル沖合いで錨を投げ(略)」と書き込み、またしても自衛隊にとっての秘密情報を流している。
「この数字によって、海上自衛隊が想定しているビーチング能力がわかる。『有事の際、沖合200メートルで投錨できる地形でなければ、輸送艦を用いたビーチングは難しい』と、諸外国やテロ組織に対し公にしたようなもの。とても艦長職にある人間の書き込みとは思えない」(元海上自衛隊幹部)
注意を受けて、「Japan NAVY」と改名
「S」2等海佐が昨年12月に艦長に就任して以降、護衛艦「みねゆき」は、母港・舞鶴を拠点とし、1月は東北沖、沖縄に行き、4月には横須賀に寄港するなど、護衛艦の動きがFacebook上から読み解けるようになった。
また1月23日の投稿では「舞鶴も吹雪です。今日は吹雪の中、視界1500メートルで帰ってきました。現在、C錨地」と、その行動が実に詳らかに記されている。艦内で出された食事についても写真投稿しているが、その際、一々「東北沖」などと、その現在地についても書き込みがされている。さすがにこれはまずいだろうと、ある海上自衛隊関係者が「みねゆき」所属の第14護衛隊司令・1等海佐に注意を促したという。
「司令(1等海佐)と艦長(「S」2等海佐)は、たしか同い年。防衛大出身のエリートの司令に、少年自衛官から叩き上げた艦長は、通信制で大学を卒業して幹部となった苦労人。自衛官歴では司令より長いためか、日頃から司令を軽視していた。また自分と異なる意見を認めない意固地なところがあった」(第14護衛隊所属護衛艦乗組海曹)