リサーチ/マーケティング会社NYCOARA,Inc.代表であり、小泉内閣時代には、竹中平蔵経産大臣の発表資料作成にも携わったアメリカ在住の田中秀憲氏が、原発停止で代替エネルギーとして注目高まるシェールガス最新事情について解説する。
福島の原発事故以来、積極的に叫ばれる脱原発論。
その議論の中で、再生エネルギー実用化までの間、主力エネルギーとして期待されるものの一つに、天然ガス資源がある。利用しやすく価格も比較的安価。そもそもこれまでの主役である液体燃料、つまり原油や、加工精製された石油製品を使用していた施設には、液体や気体状の燃料を代替として採用したほうが、より効率的であることは、専門家でなくても想像は容易。特に日本の購入価格や国内での販売価格が、諸外国よりも高額であるため、政治的要因も含め、現在では当面の代替燃料の最有力候補は天然ガス資源となるだろうと予測されている。
採掘技術の進歩により、これまでは困難であった地区でも、急速に採掘が行われている。そして、特にその中でも積極的に開発が進められているものに、「シェールガス」がある。「フラッキング」(水圧破砕法)と呼ばれる技術が実用化されたことで、米国を筆頭に英国ほか欧州諸国、そして中国などアジアでも採掘が進んでいる。その資源としての魅力は大きく、中国は外資による採掘を認めないなど、その重要性が垣間見え、今後数十年間は各国のエネルギー政策の中心の一つとなるという見方も強い。
米国はシェールガス輸出拡大に期待
もちろん、日本も今後莫大な量を輸入していくことになると思われるし、先に述べたような科学技術的/工学的背景のみならず、米国が自国のシェールガスを可能な限り高額で海外へ販売したいと考えるのは、ごく自然といえよう。なぜなら、米国は石油の輸出を禁じており、またガスの産出量が増えることで、国内価格の暴落が懸念されるため、その輸出に大きく期待をしているからだ。
となると日米の政治的関係やさまざまな思惑などから、日本を主要な販売先として考えても不思議ではない。ところが、このシェールガス採掘に関してはデメリットやトラブル、特に周辺住民への影響については、なぜか伝えられる情報が少ないようだ。
シェールガス開発に伴う諸問題の根幹は、実は採掘を可能としたその技術にある。先に述べたように、「フラッキング」という技術がこれまでの問題点を払拭し、採掘を実現したのであるが、その工法にはいまだに多くの問題点が各方面から指摘されている。この工法が、大量の水と特殊な凝固剤を地中に圧入するため、ガス採掘後には地震を引き起こすのではないかという懸念が指摘されているのだ。
事実、コロラドやオクラホマでは、採掘以前よりも格段に地震が増加。米中部を例に取ると、2000年以前は年に20回ほどであったマグニチュード3以上の地震が、09年には50回、11年は130回以上に達したという報告もなされている(米国地質学研究所:United States Geological Survey調べ)。メンフィス大地震研究情報センターは、この数字にはフラッキング工法そのものに原因があると指摘している。