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独禁法違反の常習犯、公取委の目の敵は、なぜ統合をスピード承認されたのか?

新日鉄、住友金属との巨大統合で晴らした公取委への怨念

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「新日鐵住金 HP」より
公取委がつけた条件は、非主力分野

 10月1日、新日本製鐵(以下、新日鉄)と住友金属工業が経営統合して、新会社「新日鐵住金」になる。国内粗鋼生産量第1位と第3位の高炉メーカー同士が合併して、アルセロール・ミタル(ルクセンブルク籍)に次ぐ世界第2位の鉄鋼メーカーが誕生する。

 形の上では、住友金属は「株式交換」によっていったん新日鉄の100%子会社になった後、新日鉄に吸収合併されて消滅するという二段階方式で、10月1日中にそこまで終わらせる予定になっている。株式交換比率は1対0.735である。

 両社が経営統合の基本契約を締結したのは昨年9月22日。同12月14日に公正取引委員会から合併承認を受け、今年4月27日に株式交換契約、合併契約をそれぞれ締結。6月26日、両社の株主総会で賛成多数で承認された。株式交換と吸収合併の二段階方式に変更されたほかは、算定方法が論議を呼んだ株式交換比率も変更されることはなく、ここまでほぼスムーズにことが運んでいる。

 公取委による審査は、2次審査に必要な報告書が出そろってから判断を下すまで90日ほどかかるのが通例だったが、34日しかかからなかった。昨年7月に合併審査の指針を改正して審査の迅速化を図っていたとはいえ、かなり速いスピードだった。

さまざまな条件付きの合併

 もっとも、公取委からは「無方向性電磁鋼板と高圧ガス導管エンジニアリング業務の2分野で、国内市場シェアを引き下げる」という条件がつけられた。

「無方向性電磁鋼板」は、エアコン、冷蔵庫、自動車のモーターに使われる特殊鋼で、そのまま経営統合するとシェアが約55%に達する恐れがあった。「高圧ガス導管エンジニアリング業務」は、両社の子会社が行っているガス管を道路に埋めるエンジニアリング事業で、そのまま経営統合するとシェアが約60%に達する恐れがあった。

 この2分野について、新日鉄と住友金属は問題解消措置を公取委に提示し、それをもとに公取委は実質的に競争を制限しない、つまり独占禁止法第15条(合併による過度の集中の排除)に抵触する恐れはないと判断を下している。

 無方向性電磁鋼板分野の問題解消措置とは、

 「住友金属が住友商事に顧客名簿と取引関係を引き継がせて国内向けの販売権を譲渡し、合併後5年間はすべての製品を、全量、利益を乗せない価格で住友商事に供給する」

というもの。そんな形で住友商事を「コンペティター」にし、シェアを40%に下げるという内容になっていた。

 高圧ガス導管エンジニアリング分野の問題解消措置は、今後、新規参入する業者から要請があった場合、新会社の子会社と同じ条件で導管用のUO鋼管を安定供給し、自動溶接機を譲渡するという内容になっていた。

 こうした措置の内容で公取委がOKを出したことについては、「甘い」という意見も「妥当」という意見もあるが、無方向性電磁鋼板にしても高圧ガス導管エンジニアリングにしても、両社の主力分野とはいえず、新会社の経営全体へのインパクトは軽い。