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中国政府発表の貧困解消はまゆつば

反日デモは約100兆円の賄賂が原因…数字で知る中国の経済格差

文=鷲尾香一
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post_861.jpgいまだ経済格差は解消してない?(「Thinkstock」より)
 今年9月の尖閣諸島の国有化を契機に発生した中国の反日デモ。ピーク時には、暴動に近い状況となり、中国国民が日本の小売店を襲う姿などが世界中に放映され、民度の低さが赤裸々になった。

 しかし、こうした反日デモも、発生当初は反日を叫んでいるものの、終盤になるとその目的が中国国内の格差社会に対する不満の爆発へと矛先が向けられるのも、お馴染みの光景だ。では、中国における貧困と格差社会とはどのようなものなのかを紐解いてみたい。

 2011年11月、中国国務院弁公室(同国の最高行政機関)は01年以来となる「農村貧困削減に関する白皮書」を発表した。同書によると、中国政府は近年、貧困対策に力を入れており、農村における貧困層の人口は、00年の9422万人から10年末には2688万人と大幅に減少した。

 この期間、592の貧困救済重点地域で、1人当たりの生産額が2658元から1万1170元と、年平均で17%上昇した。農民1人当たりの収入は、1276元から3273元に年平均11%上昇し、いずれも全国平均を上回った。貧困救済を目的として10年間に1440億元の財政が支出されている。

 こうした数字を見ると、中国の貧困・格差問題は着実に解消されてきているように見える。しかし、貧困水準が改正され、所得が上昇することと、格差問題が解消されることは別問題だ。

 中国では所得上位層10%の平均所得は、下位層10%の23倍程度となっている。そのうち上位10%が、前所得における40〜45%の富を支配している一方で、底辺の10%が保有する富は2%に過ぎない。

 中国は、所得が1人に集中している場合には「1」に、完全に平等な場合には「0」になる所得格差を表す指標として“ジニ計数”を08年まで公表していた。78年の改革開放以前は0.16だったジニ計数が、08年には0.47まで上昇していた。ジニ計数は0.4を超えると暴動等が発生し社会不安が生じると言われている。こうした格差は埋まらず、中国のジニ計数は公表をやめた08年以降も0.4以上の水準にあるといわれている。

 国の発表とは裏腹にこうした格差が生まれるのはなぜか? 実は中国では、正規に発表されている給与を見るだけでは、本当の生活水準は分からないと言われている。正規の給与以上に表に出ない収入があるのだ。特に、公務員や国営企業の幹部は、給与以外のさまざまな恩恵を受けていると言われる。給与など正規の収入は「白色収入」と言われ、賄賂など非合法な収入は「黒色収入」、その中間を「灰色収入」と言う。実は「黒色収入」と「灰色収入」など表に出ない「隠性収入」が、収入の大半を占めている。これが、格差の原因になっている。

 その隠性収入は、08年で約9.3兆元(08年のGDP31.6兆元の約30%)もの規模になっているという研究がある。この隠性収入の80%が高額所得上位20%の層に、さらにそこから62%が上位10%の層が占めていると言われる。所得上位層10%の平均所得は、下位層10%の23倍程度と前述したが、この隠性収入を加えると、実際には65倍の格差があると見られている。

 つまり、中国当局が把握している統計には表れない収入があり、これが格差のもとになっている。

 冒頭に述べたように、中国政府の発表を見ると、同国ではここ10年以上、貧困対策に力を入れてきており、かなりの地域ですでに経済は良くなり、貧困から脱しているはずだ。しかし、なお貧困地域では、“貧困地域”という名称を返上せずに、補助金を受け取り続けている。それは、貧困対策以外の政治工作などに使われているという実態もある。つまり、中国の格差問題は腐敗した政治と社会が作り出している点では、少しも解決に向けて進歩していないのだ。
(文=鷲尾香一)

鷲尾香一/ジャーナリスト

鷲尾香一/ジャーナリスト

本名は鈴木透。元ロイター通信編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで様々な分野で取材・執筆活動を行っている。

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