そうした自費出版ビジネスを利用せずに自力でなんとかするとしても、どうしても印刷費や在庫というコスト/リスクがある。実は紙媒体の個人出版の本をAmazonで販売する方法もあるのだが、印刷代やISBNコードという書籍用バーコードをつけるためのコストで、数十万円はすぐに消えてしまうし、刷った分すべてを書店が陳列してくれるわけではないから、段ボールに囲まれた生活を送ることになる。
しかし、そんなリスクを負わず、誰でも自由に出版できる方法が今はある。それはもちろん、電子書籍だ。
●AmazonでKindle向けに本を出版
電子書籍といえば、今話題なのはAmazonのKindleだ。実はAmazonには、「Amazon Kindle ダイレクト・パブリッシング」という、自費出版用のサービスが用意されている。
一応、わいせつな内容、違法な内容は出版できないし、著作権的に問題があるものや、内容的にあまりにもレベルが低いものは事前にはじかれてしまうが、それ以外ならば世界中のAmazonで販売してもらえる。登録料的なものはなく、売り上げから販売手数料が引かれる方式だ。
では印税がいくら著者に入ってくるのかといえば、普通なら35%、特別な契約をすれば70%が著者のものになる。100円の本を1冊売ったら35円が自分の取り分、というわけだ。ものすごく少ないと思うかもしれないが、プロの作家でも、たいていは書籍価格の10%程度が著者の取り分だということを考えると、かなり割がよい。
作るのも簡単だ。雑誌のようにかっこいいレイアウトにするにはテクニックやソフトが必要になるだろうが、横書きのテキストだけで構成されるノウハウ本や思想本であれば、Wordで文章を作成するだけでもよい。縦書きの小説だって、無料の変換ツールを使うだけで、出版社が出しているのとあまり変わらないようなものができてしまう。画像も、表紙に1枚使う程度ならば簡単だ。
つまり、ちょっとだけ勉強して、Amazonの登録作業さえできてしまえば、本当に誰でも本が販売できる。宣伝は自分でブログやFacebook、Twitterなどを駆使して行うことになるが、基本的にAmazonで検索すれば出てくるようになるから、同じジャンルのプロ作家の本と自作が肩を並べて売られる、という状態になる。
●Amazon以外でも自費出版サービスは豊富
電子書籍の自費出版は、別にAmazonでなくてもできる。極端なことをいえば、PDFにして自分のブログから配布することだってできるが、一応有料で販売できることを条件にしても、かなりいろいろなサービスがある。
「Amazon Kindle ダイレクト・パブリッシング」と似た、楽天koboのサービスは「Kobo Writing Life」(http://www.kobobooks.com/kobowritinglife)だ。
スマートフォン向けなら、Android向けの「androbook」(http://androbook.net/)、iOS向けの「Paberish」などが有名だ。
書籍に限らず、データを売るという「DL MARKET」や、コミックコンテンツに特化した「漫画onWeb」などもある。