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シリアルアントレプレナー・小川浩「Into The Real vol.14」

『グラゼニ』に見る、プロ野球選手と起業家の出口戦略…平均寿命はわずか3年?

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『グラゼニ』(講談社/森高夕次)
 現在のソーシャル × モバイル化へと続くWeb2.0時代の到来をいち早く提言、IT業界のみならず、多くのビジネスパーソンの支持を集めているシリアルアントレプレナー・小川浩氏。そんな“ヴィジョナリー”小川氏が、IT、ベンチャー、そしてビジネスの“Real”をお届けする。

グラゼニ』(講談社/森高夕次)というコミックをご存じだろうか? 

 年収1800万円の中継ぎ投手の主人公が、平均9年という短いプロ野球選手人生の中で、引退後の生活の保障のなさにおびえつつ、職業としての野球に取り組むという話だ。華やかに見えるプロ野球だが、実際には、みんな個人の生活を守るために必死だという、当たり前のことを当たり前に描いている。

 起業家にも同じことが言える。スタートアップを興すのは簡単だが、維持し、成長させ、最適な出口戦略(イグジット)にたどり着く確率は非常に低い。野球では選手生活の平均寿命は9年だが、起業の場では3年以上持つ会社は非常に少ないのである。プロ野球選手は一人一人が個人事業主だが、起業家もまた同じ。プロの創業者、経営者という職業を選ぶのが起業家だといえるだろう。

 野球選手は一軍に定着して年俸を少しでも上げながら、できるだけ長く働き、引退したときにはコーチや監督、テレビ解説者などの仕事を得るというキャリアパスがある。起業家はIPOを達成して、大企業の経営者という多少ベンチャー経営者と異なる資質が求められるステージへと進む幸運をつかむか、M&Aに成功して十分な資産を得ること、そしてそれをトラックレコードとして次の起業につなげるか、自身が投資家になるなどのキャリアパスがある。

 つまり、IPOを経て大企業への道を進むか、M&Aによる企業売却を行うかのどちらかの“出口”を選択する。それ以外は失速して縮小あるいは倒産してしまうか、それとも成長をあきらめて生存することを目標に切り替えていくか、どちらにしてももはやスタートアップではなくなるのである。

●資金調達というマイルストーン

 スタートアップの成長を支えるガソリンに当たるものは資金だ。資金がなければ、無鉄砲な起業家といえども冒険はなかなかできない。だから、資金調達に成功するということは、起業家にとって何よりうれしいマイルストーンだ。

 一般的に資金調達には銀行などの金融機関からお金を借りる「融資」と、投資家に自社の株式を購入してもらうことで資金を得る「出資」の2つがある。最近では「将来一定の条件で株式に変換してもよい」という融資と出資のハイブリッド的な手法(CB=コンバーティブルボンドまたはコンバーティブルノートという)をとる投資家もいるが、いずれにしても起業家としては資金を得ることに貪欲にならざるを得ない。

『グラゼニ』の主人公たちが年俸交渉に躍起になるように、起業家もできるだけ良い条件での資金調達に必死になる。融資を受けるということは借金をするということであり、日本の銀行にはまず100%社長自身が連帯保証をさせられるから、人生賭けての大勝負になる。投資を受けるということは、自分がつくった会社の株式を譲り渡すということだから、自分の血肉を切り売りするのと同じことになる。こうした覚悟がある者だけが、起業家への道を選ぶのである。

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●小川浩(おがわ・ひろ) 
シリアルアントレプレナー。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)、『仕事で使える!「Twitter」超入門』(青春出版社)、『ソーシャルメディアマーケティング』(ソフトバンククリエイティブ/共著)などがある。
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