>  > 衰退化が止まらない美少女ゲーム業界
NEW
「タニマチ商法に頼らざるを得ない」――ゲームプロデューサーnbkzが実情を吐露

平均年収は300万円以下?! 衰退化が止まらない美少女ゲーム業界の現状

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
【この記事のキーワード】,
「minori」代表兼プロデューサー酒井伸和氏
(写真/吉岡教雄)

 『リトルバスターズ!』『トータル・イクリプス』『恋と選挙とチョコレート』『Fate/Zero』......これらは2012年に放送されたテレビアニメのタイトルだ。アニメファンでなくても、タイトル名くらいは聞いたことがあるかもしれない。

 実は、これらのアニメには共通点がある。それは物語の原作が美少女ゲームであることだ。美少女ゲームとは美少女キャラクターが登場し、物語の主軸をなすPCゲームを指す。物語の進行中に18禁要素(性描写などのアダルト要素)を含んでいるのが大きな特徴だ。

 美少女ゲーム原作のテレビアニメは2000年代に入ってから増え、有名なところでは『Kanon』『AIR』(Key)、『君が望む永遠』(アージュ)、『School Days』 (Overflow)、『ef』(minori)などがある。特に、事故の影響で記憶を失った主人公の元恋人と現在の恋人との間に起こる葛藤を描いた『君が望む永遠』に至っては、かつて日本でも社会現象化するほど人気を博した某韓流ドラマにプロットが酷似しているとして、このドラマが本作を盗作したのでは、という疑惑で話題になったこともある。また11年に大ヒットを飛ばし、数々の文化賞を獲得したテレビアニメ『魔法少女まどか・マギカ』の脚本家である虚淵玄氏はもともと美少女ゲームの人気脚本家であり、同氏が所属し、まどか・マギカのアニメ制作にも携わったニトロプラスは美少女ゲーム制作会社だ。

 こうしてみると意外と身近に存在する美少女ゲームなのだが、学園ものであったり、キャラクターデザインが幼かったりすることなどから児童ポルノに当たるとしてマンガ・アニメ・ゲーム表現規制法問題を生み出したり、激しい暴力や性犯罪が描かれることも多く、犯罪助長につながるものだとバッシングを受けたりするなど、公序良俗の観点から批判の的になることも多い業界だ。こうした背景もあり、制作する企業側も表舞台に立つことはあまりなく、謎に包まれている部分が多い。

 美少女ゲーム業界自体は、パソコンが一般家庭に普及し始めた90年代後期から2000年代初頭にかけて市場を拡大し、その売り上げは一時期年間300億円に迫るほどであった。しかし、その後は徐々に縮小し、いまでも年間に600タイトル近く発売されているのであるが、昨年の売り上げは220億円にとどまると予測されている。(2012年矢野経済研究所調べ)

 そこで今回はこの美少女ゲーム業界の実態を確かめるべく、efシリーズでも有名な人気ブランド「minori」の代表兼プロデューサーでもある酒井"nbkz"伸和氏に直撃インタビューを敢行した。

アニメ化され様々なメディア展開を見せたefシリーズ。"
アニメ化され、様々なメディア展開
を見せたefシリーズ。

ーーまずお聞きしたいのですが、美少女ゲームの制作費ってどのくらいなのでしょうか?

nbkz  コスト管理をする経営者としての立場からお話しさせていただくと、ある程度のクオリティを維持する作品にするなら3,000万円くらいからでしょうか。

 例えば、原画・彩色(2名)・シナリオ・ディレクターという最小構成5人の内部スタッフがほかをいろいろ兼任する前提で、月給25万円のメーカーとして1年間でフルプライス(※編注:8,800円)のゲームを作るとします。まず年間の人件費が1,500万円。音声、音楽、プログラム、背景を外注したとして外注費400万円。宣伝用ムービーやらチラシ、ポスター、交通費の営業費で150万円。地代・税金・光熱費・通信費など、会社の維持費が年間360万円。ここまでで2,410万円です。これに、プレス代、箱代などの変動制作費が加わり、社員への社会保障費などを加味すると、最終的に3,000万円は必要になるだろうと。

 実際には、この人数でフルプライスに堪え得るものを1年で作るには相当な負荷がかかりますから、よりきちんと手を入れていけば、タイトルによって億を超えることもあります。minoriで言えば『すぴぱら』(※編注: 12年春発売の、minori初のアダルト要素が一切ない全年齢向け作品)、『ef』(※編注: 06年前編、08年後編の2部構成で発売された代表作。後にシャフトによりアニメ化され、PS2にも移植された)は1億円を超えています。

ーー1億円!? どこに、そんなにお金がかかるんですか?

nbkz   一番がCGの制作費ですね。CGは動きで見せるアニメとは違い、静止画として1枚の完成度が要求されますので、線の処理が複雑であったり、彩色としては複雑にグラデーションがかかったり、エフェクトもかけたりと、作業工程がものすごくかかるんです。作業時間は当然長くなるので、それだけ人数を割かなければなりません。この枚数が多ければ多いほど、コストは増大します。また、背景画も長時間見るものなので綿密に作る必要があります。

 最近は解像度が上がっていることもコスト増の原因です。以前は800×600がメインでしたが、いまは1920×1080が中心です。単純に、塗る面積は4.3倍に増えたことになります。これにより当然作業時間は増大し、より綿密な画像処理が求められます。大容量のデータを扱うことを考えると、ユーザーの使用するPCのスペックも考えていかないといけなくなります。ユーザー全員が最新のマシンを持っているわけじゃないので、どこまで対応するかが悩みどころになってきます。PCゲームの場合、コンシューマー機と違い、ユーザーの環境を画一化できませんから。

『すぴぱら STORY #01 - Spring Has Come!』


もっと評価されるべき。さもありなん。

amazon_associate_logo.jpg

識者のブログ記事一覧Business Blog