ここ数日、米国の株式市場などで業績不振の米ゲームソフト販売大手「ゲームストップ」(GME)株が“謎の急騰”をし、全世界の投資家の間で注目を集めている。GMEの時価総額は月初の18倍を超え、27日には200億ドルを突破した。複数の報道で、相場急騰の背景には英語圏SNS「reddit」上で連携するゲーム愛好家などの“個人投資家”の存在が指摘されているが、果たしてどういう人たちなのだろう。
時事通信は28日午前9時8分、『ゲームストップが連日急騰 業績不振も、個人投資家主導―米市場』を配信。以下のように報じた。引用する。
「ゲームストップの2020年8~10月期業績は、売上高が新型コロナウイルス流行で前年同期比3割減となり、赤字計上を余儀なくされた。しかし同社の株価は今週とりわけ大きく上げ、年初から18倍超に達した。
相場急騰の背景には、SNS『レディット』でつながる個人投資家の存在が指摘されている。ゲームストップのさえない業績を踏まえて株価下落を当て込み、『空売り』を仕掛けていたヘッジファンドに、個人投資家が対抗する機運がSNSへの書き込みを通じて高まっていたという」(原文ママ)
つまり、ゲームストップの業績不振に付け込む形で、利益を得ようとしていた機関投資家や大手ヘッジファンドに対し、大量の個人投資家が参戦し、対決していたというのだ。
Bloomberg日本語版サイトでも28日、この現象に関し『ゲームストップ株価急騰、新たな極みに-空売り投資家の一部は降参』との記事を配信。GME株をめぐる攻防戦で守勢に立たされ始めた機関投資家の現状を報じている。
「初めて投資」「コロナ給付金が原資」個人投資家の実態とは?
では、突如市場に表れた“個人投資家”と何者なのか。時事通信の記事でも言及されている「reddit」上で連携し、仕手戦に参加しているとみられる各ユーザーの書き込みを数日前までさかのぼって見てみた。その結果、「初めて株取引に参加」したなどと語る人物、「新型コロナウイルス感染症で政府から配られた給付金を原資にしている」などと語る人物、ヘッジファンドとの仕手戦で出た利益を「大学奨学金の返済に充てている」などと語る人物などが散見された。いずれも自称なので、真偽の確認は取れない。
大手証券会社のファンドマネジャーは匿名を条件に、次のように語る。
「私も気になってredditで個人投資家の動向を見ていましたが、コロナで苦境に立たされても、支援金や手元の資金を貯金に回さず、それを起死回生の一手に変えようとする姿勢が、米国らしく、そういう個人投資家もいるだろうなと思いました。ステイホームの影響もあるでしょうし、『家で鬱々としているくらいなら』と株取引アプリを初めてダウンロードした若い人たちがいるのも確かです。ただ、この急騰の要因が、初心者や市場に詳しくない個人投資家によるものなのかといったら、少々、懐疑的ではあります。
また、個人投資家の中には、SNS上でヘッジファンド側のアナリストやその家族の個人情報をさらしたり、誹謗中傷したりする人もいるようで、そうした“場外乱闘”も米国内などで徐々に問題視され始めています」
新型コロナウイルス感染症の影響は、市場プレイヤーの対立構図にすら新しい変化を起こすのだろうか。
(文・構成=編集部)