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吉田潮「だからテレビはやめられない」(3月30日)

小出恵介はポスト・ジミー大西? お笑い芸人より目立つ“ギョウチュウ”俳優の発見

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小出恵介(右/『おいしい
プロポーズDVD-BOX』
<ビクターエンタテインメント>より)
 主要なテレビ番組はほぼすべて視聴し、「週刊新潮」などに連載を持つライター・イラストレーターの吉田潮氏が、忙しいビジネスパーソンのために、観るべきテレビ番組とその“楽しみ方”をお伝えします。

 あら、珍しい! ジミー大西が『A-Studio』(TBS系/3月8日放送)に出ている。
 
 と思ったら、俳優の小出恵介だった。ま、それは冗談だが、それくらい落ち着きがなかった。頭をポリポリ掻いたと思ったら、鼻をつまんだり、腕を組んだり、太ももをさすったりと、とにかく止まっていられない。普段は落ち着きのなさを指摘される側の笑福亭鶴瓶も、さすがの小出クラスにはかなわない。

 小出といえば、ドラマに映画に舞台に引っ張りだこで、どちらかといえば二枚目系の役が多い。優等生、正義感あふれる熱血系、真面目で不器用だが一途な男など、あまり面白味のない役どころばかりだったように思う。なのに、本人そのものが、こんなに天然のキテレツさんだったとは。

 落ち着きのない人を、昔はよく「おなかに虫を飼ってる人」と言っていた。ギョウチュウがいると、お尻が猛烈にかゆくなり、落ち着いていられない状態になるからだ。小出はまさにそのタイプ。だが、画面や舞台上での芝居を観る限りでは、一切ギョウチュウ感は見受けられない。沈思黙考、質実剛健みたいな四字熟語のイメージは、完全に痛快に裏切られたのだった。

 役柄と本人の性質が乖離すればするほど、役者としての箔がつくような気もする。本来、役者なんて「嘘をついて客をいかに欺くか」が商売なのだから。演出家のケラリーノ・サンドロヴィッチや蜷川幸雄の寵愛も受けているようだし、若手実力派俳優と太鼓判を押してもいいだろう。小出恵介の底の深さを改めて認識させられた。

 テレビでは、ジミー大西の姿も大みそかの『絶対に笑ってはいけない24時シリーズ』(日本テレビ系)くらいでしか見かけないので、ギョウチュウ枠が空いている。ぜひ、ここで小出に登場してもらい、隙間を埋めてもらいたい。なんて思っていたら、また遭遇した。

『ものまねグランプリ』(同/3月19日放送)は、陳腐なものまね対決ではなく、さまざまな趣向を凝らしたつくりになっていて、意外と面白かった。なかでも、高田純次本人と高田純次のマネをする原口あきまさが花田虎上のお宅訪問をする企画や、清水ミチコと椿鬼奴のW桃井かおりモノマネがロケに出る企画は秀逸だった。

 で、懸案の小出は、この後者の企画に登場。清水と椿の繰り出す毒気が容赦なく小出に襲いかかったのだ。高級な鮨店で、ヘラヘラもぞもぞと動く小出。清水の年季の入った桃井マネ、微妙に似てないが言葉のチョイスがハイセンスな鬼奴の桃井マネ。腹を抱えて笑いながらも、やはり小出の落ち着きのなさに目が釘付け。

 映画『ボクたちの交換日記』(ショウゲート)の宣伝のために、ここ数日テレビ露出が多かったのだが、小出のポテンシャルをまざまざと見せつけられた気もする。ついこの前までは、“コイデ”と言えば、京都大学の原子力研究で辛酸を舐め続けた小出裕章助教が頭に思い浮かんだのだが、
今じゃ小出恵介である。

 もし今後「小出恵介が行くチベット密教の旅」とか、二枚目俳優によく課される気取ったイケすかない旅紀行番組が企画されるとしたら、ものすごく楽しめるだろうな。できるだけ厳粛な場所(教会とか)へ行かせて、小出がモゾモゾするシーンを観てみたい。
(文=吉田潮/ライター・イラストレーター)

●吉田潮(よしだ・うしお):
ライター・イラストレーター。法政大学卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。「週刊新潮」(新潮社)、「ラブピースクラブ」(ラブピースクラブ)などで連載中。主な著書に『2人で愉しむ新・大人の悦楽』(ナガオカ文庫)、『気持ちいいこと。』(宝島社)、『幸せな離婚』(生活文化出版)など。カラオケの十八番は、りりぃの「私は泣いています」、金井克子の「他人の関係」(淫らなフリつき)など。