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65歳雇用義務化、「若者vs.中高年」のワナ…“老益”活用でビジネス創出へ

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「Thinkstock」より
 従業員を65歳まで雇用するよう企業に義務付ける改正高年齢者雇用安定法が、4月1日に施行された。会社員が加入する厚生年金で、男性の支給開始年齢が60歳から61歳に引き上げられ、2025年度には65歳となることに伴う措置だ。勧告に従わない場合、企業名を公表する規定も設けられた。

 現状を見ると、ほとんどの企業は継続雇用制度を導入している。定年後の賃金を引き下げ、人件費を抑えることができるからだ。しかし、サントリーホールディングスや大和ハウス工業のように定年自体を65歳にする企業もある。

 どのような改革にも賛否両論がある。65歳定年延長の場合、年金対策として実施されたため、否定の意見として「若者の雇用を奪う」懸念が目立つ。まさに世代間闘争の様相を呈してきた。新卒者は相変わらず就職に苦労しているため、否定的意見に拍車がかかる。

 しかし、「若者vs.中高年」という二極対立論で人的資源管理、人材活用を論じてよいものだろうか。もう少し、ニーズから考えてみる必要があると思われる。

 若さに対するニーズという点では、経営者の「若返り」が経済界の潮流になってしまった。最大の要因はグローバル化だろう。主たる企業活動が海外に移っても、社長室が日本にある限り、社長は外国へ足を運ばなくてはならない。その頻度はひと昔前、ふた昔前の社長との比ではないほど増えている。それには体力が必要だが、老体に鞭打ってというわけにはいかない。

 もうひとつの「若返り」を促す要因は「老害」である。「老いること、すなわち害である」という意味で使われ、今や定着した感のある言葉だ。「長幼の序」といった表現は、もはや死語になってしまった。

 65歳以上の社長・会長が10年近くも君臨し、業績が悪化しようものなら、マスコミはこぞって「院制を敷こうとしている」と叩く。しかし時は高齢社会である。2050年には2.5人に1人が65歳以上になる。つまり、「老害」という言葉を気安く使えば、国民の半分を敵に回すことになる。

●意外な高視聴率番組とは?

 そこで、視点を変えてみよう。市場は「海外にあり」と述べたが、国内に目を向けると、「需要は高齢者市場にあり」が鉄則となってきた。たとえば、若者のテレビ離れが叫ばれる中、常時、高い視聴率をキープする番組がある。それが、平日午後7時放送のニュース番組『ニュース7』(NHK)だ。そして約15%の平均視聴率を維持しているのが、同じくNHKの『歌謡コンサート』(毎週火曜日午後8時放送)である。「『歌謡コンサート』が人気だそうですよ」と30代半ばの大企業の女性社員に話しかけると、「そんな番組をいったい誰が見るんですかね」と、そっけない感想を述べた。このような感覚では、高齢者市場を開拓できない。そこで、高齢者のニーズをあらためて勉強してもらう必要があるが、20~40代が仕入れた情報と経験には限界がある。

 やはりここは、近くにいる高齢者リーダーに教授してもらうのが手っ取り早い。しかし、現在の20代を中心に、年上と会話する「縦のコミュニケーション」が下手になっている。これでは、下から斬新なアイデアがどんどん提言されてくるかどうかは定かでない。上が「高齢者のアイデア」を提言し、ぐいぐいと引っ張っていくしかない。

 実は、高齢者ビジネスは、海外市場開拓を考えた場合も、大いに有望なビジネスなのである。一人っ子政策の影響により少子高齢化が日本以上に進む中国では、老人ホームや医療、介護などの需要が伸びるだろう。

 ノウハウを日本で着々と磨き、この分野でも「日本の技術(ノウハウ)」が優れていると評判が良くなれば、「日本製」に対するニーズが高まるはずである。製造業の衰退が叫ばれる日本だが、こうした「大人の事業」で韓国メーカーと差別化を図ることができるだろう。

「大人の事業」を考えた場合、トップやリーダーが若ければいいというものではない。「大人の味」を理解できる経験豊かな経営者が、若い人の行動力を借り、トップやリーダーを務めても間違いではない。「老害」と呼ばれる悪いカリスマ性を発揮しなければ、「老益」をもたらすことだろう。

 65歳定年延長が現実のものとなってしまった今、凝り固まった「若者vs.中高年」のフレームで世代間対立に陥るより、この制度をどう生かすかを考えたほうが、前向きな対策になるのではないだろうか。
(文=長田貴仁/ジャーナリスト 経営学者)