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大塚将司「【小説】巨大新聞社の仮面を剥ぐ 呆れた幹部たちの生態<第1部>」第27回

自治体からの利益供与を金でもみ消し!? 大手新聞社長のスキャンダル疑惑

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「Thinkstock」より
【前回までのあらすじ】
--巨大新聞社・大都新聞社は、ネット化を推進したことがあだとなり、紙媒体の発行部数が激減し、部数トップの座から滑り落ちかねない状況に陥った。そこで同社社長の松野弥介は、日頃から何かと世話をしている業界第3位の日亜新聞社社長・村尾倫郎に、以前から合併の話を持ちかけていた。そして基本合意目前の段階にまで来たある日、割烹「美松」で、村尾、両社の取締役編集局長、北川常夫(大都)、小山成雄(日亜)との密談が行われ、終了後、松野と村尾はそれぞれの愛人の元へ帰っていった。そして、数日後の4人による第2回目会談の前、先に松野と落ち合った村尾は、松野にまつわる、あるスキャンダルの噂について尋ねた--。

 大都新聞社長の松野弥介はしばらく腕組みをして考え込んでいたが、意を決したのか、話し始めた。

「もし、俺が大都の社長じゃなきゃ、ゴミみたいな話なんだよ。コンビニでアンパン1個盗むような話さ。それも、俺の親父の話だ。俺のことじゃないんだ」
「確か、先輩のお父さんは、和歌山県の山間部の町の町長でしたね」
「そうなんだ。その親父が俺の名前を使って和歌山県の土地を無償で借りて、その土地を又貸ししてサヤを抜いていたんだ」
「あ、そういう話ですか。でも、どれくらいのサヤ抜きですか?」
「借りた土地は約150坪の雑種地だ。最初は年間賃料10万円だったが、3年後に契約を見直し、無償になった。町長が自分個人に貸すのはまずいと思ったんだな、俺の親父が。それで、借り主を俺にして町長の親父と契約しているわけさ」

 土地は不動産登記規則で23種類に分類されている。田、畑、宅地など22種類は用途がはっきりしているが、そのどれにも当てはまらないのが23番目の「雑種地」だ。資材置場や駐車場、土地の面積に対し極めて小さい建物がある土地などが該当する。

「雑種地じゃ、借りても仕方がないですね」
「それが違うんだ。その土地の一帯を“道の駅”にする計画があってね。開発前に借りておけば、又貸しできる。田舎でも、毎年、200〜300万円の小遣い銭を稼げる」
「“道の駅”はできているんですか」
「もうとっくにできている。賃貸契約の期間は30年という長期でね、数千万円が濡れ手で粟なんだな。まあ、この程度の役得は、地方じゃ当たり前なんだがね……」
「僕の地元も兵庫県の町で、親父は町会議員でしたからわかります。確かに、その程度のことは地方じゃ珍しいことじゃないです。それがどうして問題になったんですか?」
「5年前、関西の会社ゴロみたいな男が大阪編集局にやってきた。俺は会わなかったが、うちのゲシュタポが会った。そうしたら、件の賃貸契約書を持ってきたんだな」
「それで、どうしたんですか?」
「親父のやったことだし、地方じゃ珍しいことじゃない。それに、濡れ手で粟の便宜供与といっても大した金額じゃない。最初は表沙汰になってもどうということはない、と思った。でもな、俺は大都社長じゃないか。思い直した。アンパン1個でも万引がばれれば一巻の終わりだろ」
「カネでも使ったんですか?」
「ふむ。今もその会社ゴロを情報屋で使っている」
「契約のほうはどうしたんですか?」
「3年前に親父は亡くなったが、借りているのは俺だし、町長も代わっている。契約を解除すると、寝た子を起こすようなことになりかねない。そのまま、放置している」
「それはまずくないですか?」
「そんなことはない。ゲシュタポが抑え込んだし、不倫がばれるよりはましだ」
「それもそうですね。この件も2つのSということですね」
「そういうことだ」

 松野が締め括り、2人は顔を見合わせ、哄笑した。

「よし。これで、お互いにガラス張りだな」

 ひとりしきり哄笑していた松野は笑いが収まると、村尾に右手を差し出した。

「ええ、これで何の疑問もありません」