(撮影:本屋「Wikipedia」より)
今年4月の頭ごろ、北朝鮮によるミサイル発射が危惧され、多くのメディアがこれを報じた。日本の報道機関は連日のように北朝鮮のミサイル「ムスダン」の映像を流し、韓国メディアでも北朝鮮の動静を報道、「明日にもミサイルが発射される」というような報道も行われていた。毎年4月は北朝鮮において、金正恩第一書記の就任記念日や故・金日成の誕生日である「太陽節」、そして人民軍創立記念日とさまざまな国民的行事があり、毎年のように“北朝鮮の騒動”が起きている。
それに合わせて今年は、米韓軍事演習が行われ、北朝鮮を仮想敵とした訓練を実施。一方の北朝鮮政府も連日のようにアメリカ・韓国・日本を威嚇し、また元山あたりに移動式ミサイル発射台を設置して、いつでも発射できるとしていた。
こうした状況についてマスコミは、「日本は、(北朝鮮のミサイルに対して)万全な体制を整えている」と、防衛省(東京・市ヶ谷)に設置された迎撃ミサイルを映し出していた。しかし、日本の防衛省の対応は、かなり余裕を見せていて、実際に内部でも北朝鮮からミサイルが飛ぶのかどうかについて疑問視する声も出ていたようだ。
ある防衛省幹部は、こうした事態に対して「そもそも北朝鮮は、ミサイルを発射できなかったのではないでしょうか?」と語っていた。その背景には次のような予測があったのだという。
「すでに報じられていますが、4月4日、世界的なハッカー集団であるアノニマスが、北朝鮮のコンピューターをハッキングしたと宣言しています。そのときに、北朝鮮のサイト『わが民族同士』などから1万5000人分にも及ぶ会員名簿が明かされ、日本人の名前なども出てきたので話題になりました。
いうまでもなく、ハッキングというのは、非常に高度な技術が必要で、政府関係のコンピュータに侵入するのは難しいこと。あれらの名簿が明らかになったということは、アノニマスは、北朝鮮軍のコンピュータであの名簿が置かれているのと同じセキュリティレベルにある情報に対しては、すべてハッキングが可能だと、宣言したことを意味します。件のハッキングの際には、単純に情報を盗んだだけではなく、金正恩第一書記の写真を加工して掲載したりもしている。これは、北朝鮮軍の中枢にあるコンピューターにアクセスして、中身をいじった形跡があるということです。北朝鮮軍の関係者もこれらの形跡を見て、『発射システムやレーダーシステムまたは各関連の施設の情報などもすべて明らかになった』と考えたでしょうし、また、その重要なシステムにウイルスが仕込まれた可能性も考えなければならない事態に陥ったわけです。要するに、ミサイル発射や核爆発をコントロールするコンピューターの中心部が、アノニマスに工作されてしまって、北朝鮮の思い通りに動かなくなった可能性があるのです」
防衛省幹部は、ハッキングという内容の基本的なことを言っているだけである。
「アノニマスのメンバーや、アノニマスから情報を得ている人々にとっては、北朝鮮による一連の挑発は、笑い話でしかなかったと考えます。北朝鮮は『ミサイルがどこを狙っている』とか『発射はいつでもできる』などと言っていましたが、そうした発表の前に、アノニマスには北朝鮮の狙いも発射装置もすべてわかっているわけですから。しかし、北朝鮮はそうして威嚇すること、そしてその反応によってアノニマスの情報がどこまで流れているかを調べる意図があったのかもしれません」(同)と、一連の威嚇は単なる情報戦的な駆け引きであったと判断していたようだ。防衛省幹部が続ける。
「そう考えると、北朝鮮の威嚇に対するアメリカや韓国の反応も理解できます。通常なら、北朝鮮による核ミサイルの脅威をそのままにしておきながら、計画通りに軍事演習を遂行するというのは、なかなかできることではないですから。北朝鮮にしても、そうした情報戦が一段落したら、当然ミサイルはしまう。何しろ発射システムを造り変えなければならないのですから、いつまでもその姿を見せる必要はないですよね」
以上のように、防衛省幹部は、今回の北朝鮮の動きが、それとなく理解できていたと語った。一方で、日本国民に対しては警鐘を鳴らす。