現在の東アジア情勢は、混沌としておりまったく展望予測が立たない状態にある。2010年から2012年までの間に、ほとんど全ての東アジア諸国が政権交代をした。中国は、今年の3月末に習近平氏が国家主席に就任。また、韓国も李大統領から2月に朴大統領に代わっており、政権は安定していない状態である。台湾は昨年の初めに馬総統が続投したが、今年に入って大規模な政権打倒デモが起きるなど、同じく政権が安定していない。もちろん御存知の通り、日本でも昨年末に民主党から自民党に政権が戻り、安倍内閣が始動したばかりである。
このように東アジアのどの国も政権がまったく安定していない状態で、その間隙を縫って北朝鮮が核実験を行ったのだ。
北朝鮮は12年12月にロケットを打ち上げ、今年になって核開発を主張し(その後2月12日には地下核実験の実施を発表)、その攻撃対象をアメリカにあるとして大々的に宣伝した。こうした北朝鮮の動きに対して、1月23日には国連安全保障理事会は、中国を含め拒否権を使うことなく非難決議を採択したのである。
なお、北朝鮮の行った核実験とは一体どのようなものなのであろうか。もれ伝わる情報などによると、核融合型の爆破実験だったようだ。通常、広島に投下された原爆を含め、核兵器といえば核分裂型が主流で、核物質が分裂するときのエネルギーを使って爆発をさせるものとなっている。しかし、ビキニ島で第五福竜丸が被爆した事件や、中国、ロシアも実験を行った水爆は、核融合型といわれ、核物質がぶつかって融合するときのエネルギーを爆弾に使うという方式である。しかし、これは「地球そのものを破壊してしまう可能性がある」として兵器として使用することを避けるようになり、現在ではまったく行われていない状態なのである。それを北朝鮮が再開したというのであるから、問題の大きさは尋常ではない。
ここで問題なのは、実はこうした情報を政府や大手マスコミは、事前に入手していたはずなのだ。それにもかかわらず、実際に北朝鮮からの声明が出されるまで、なぜか日本のマスコミは、これを報道しなかった。
日本よりもはるかに対応よく行ったのは、政権が不安定なはずの中国である。北朝鮮が核実験の最終的な狙いとして定めるアメリカを攻撃することのできる核兵器は、当然、中国を攻撃することが可能なのである。関係者の話によると、中国はこの情報が入ってすぐに会議を開き、北朝鮮に対する対応を協議。朝鮮半島の非核化に対してよりいっそう働きかけると同時に、今回の件で、北朝鮮をあまり刺激しないという方針を立てたのである。
一方、アメリカは、片方で攻撃に備え、最悪の場合は在韓米軍、下手をすれば在日米軍も引き上げる覚悟で、アメリカ本土を守るということだけに専念する状態にあるという。アメリカは核、特に放射能の被害に対しては非常に敏感であり、軍人と言えどもその被ばく被害にさらすことに対しては敏感である。
そんな状況の中で、日本のマスコミはどのように対処したか。もちろん、いたずらに不安を煽るような報道は、単純にパニックを起こすだけであるから良いものではないはずであるし、当然それらは控えなければならない。しかし、同時にこれだけの危険があるのだから、少なくともアメリカや中国などに取材して、北朝鮮に対する問題をいかに対処しているかなどは、しっかりと報道しなければならない。そもそも日本人の大部分が「六カ国協議」を「日本の拉致事件の解決のため」と誤解しているが、実際には朝鮮半島の非核化によって、日本をはじめとする多くの国の安定した平和を守る会議である。それにもかかわらず、少なくとも誤解を解くというような話を行わないのは、マスコミとして怠慢というよりは、本来の役目をまったく果たしていないといわざるを得ない。
さらに、ニセの情報をつかまされて、それをそのまま検証することもなく報道して、それに対する反省もない状態なのだ。
昨年12月12日に北朝鮮がロケットを発射したが、その直前12月10日に、韓国の情報として、北朝鮮のロケットは、故障し、発射台の上で解体されていると言う報道が流された。これは、今になって考えれば、北朝鮮が韓国に情報を流しているスパイを選別するためのニセ情報であったのであるが、他国の情報をまったく検証することなく、また他の国の情報と整合することもなく、ただ漫然と情報を垂れ流している日本のマスコミは、この韓国の、そして北朝鮮からのニセ情報を簡単に報道してしまい、日本人の多くを、結局はだますことになったのである。