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吉田潮「だからテレビはやめられない」(6月3日)

NHK、あまちゃん好調で加速する“クドカン推し”は戦略勝ち?一抹の不安も…

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「あまちゃん 公式サイト」(NHK HP)より
 主要なテレビ番組はほぼすべて視聴し、「週刊新潮」などに連載を持つライター・イラストレーターの吉田潮氏が、忙しいビジネスパーソンのために、観るべきテレビ番組とその“楽しみ方”をお伝えします。

 今、まさに「クドカンブーム」である。

 朝の連続ドラマ小説『あまちゃん』の好調で、味をしめたNHKがこぞってクドカンこと宮藤官九郎を推している。映画『中学生円山』(東映/5月18日公開)の宣伝もここぞとばかりに便乗して、うまいこと軌道に乗っているようだ。映画公開日が大幅に遅れたのも、あまちゃん効果を見計らってのことか、と勘繰ってしまった。単純に、本人が忙しいだけなんだろうけれど。

 ドラマ好きの間では、クドカン作品は鉄板である。正直、視聴率なんかどうでもいいと思っているし、低かろうが高かろうが最後までねっとり観続ける。劇中の細かいギャグや、日常で「あるある感」あふれる設定、キャラクターの凡庸性の中に滲み出るおかしみ。個人的には『タイガー&ドラゴン』(TBS系)が大好物だったし、ここ数年で言えば『うぬぼれ刑事』(同)や『11人もいる!』(テレビ朝日系)で毎回毎回涙した記憶がある(面白すぎて、涙どころか失禁寸前)。

 でも、クドカンワールドにもクドカン本人にも親しみのない人々は「なんだか朝ドラが話題になっていて、すごい人らしい」と新鮮な心持ちなのだろう。そこで画面に現れたクドカンの、なんともいえない脱力感。帽子によれっとしたシャツ、無精ひげで猫背気味、キュートな歯並びで、テンション低め(血圧もたぶん低め)のしゃべり口。NHK信奉の年輩者が一瞬言葉を失う感じが想像できる。そもそも名前からして「歌舞伎役者?」と言いそうな気もする。うちの両親に聞いたら、たぶんそう返ってくるだろうな。

 先日はNHK朝の情報番組『あさイチ』のプレミアムトークに出るわ、NHK Eテレの『SWITCHインタビュー 達人達』に葉加瀬太郎と出演するわ、と大忙し。これで一気に全国津々浦々のクドカン認識度が高まったことだろう。爺さんも婆さんもオッサンもオバチャンも「クドカン」をしっかり認識&把握。思えば、かなり前からNHKはクドカン推しを始めていた。深夜の生放送『おやすみ日本 眠いいね!』でMCをさせたり。それもこれも巧妙な「あまちゃん推しの包囲網」だったのかもしれない。パンクコントバンド「グループ魂」で紅白歌合戦に出場したときは、完全にノーマークだったのにね。

●NHK、民放での成果をかっさらう?

 今までは、クドカンドラマ=TBSのイメージが強かったが、NHKがガーッとかっさらった感もある。民放で、丁寧にこっそりサブカル混じりの良質ドラマを育てていたのに、その成果をNHKが根こそぎ奪う、みたいな。ま、NHKも虎視眈々とクドカンブームの導火線を時間かけてあちこちに張り巡らしていたのだから、作戦勝ちともいえるだろう。

『あまちゃん』は手放しで面白いし、毎朝15分間もクドカンワールドを堪能できて、今は本当に幸せである。ただ、NHKがクドカンを囲い込んだりしないか、不安でもある。大河ドラマの脚本をふっちゃったりしないか、心配でもある。うっすら三谷幸喜が頭をよぎる。NHKの「ウチ的には、ソレちょっとNGなんで……」が脚本の鮮度や味を奪わないとは限らない。スポンサー様にへりくだる民放局も、同じといえば同じだろうけれど。

 気が早いとは思うが、今後、クドカンに期待したいのは、大御所系や煮ても焼いても食えない系をうまいこと料理するドラマである。高倉健とか吉永小百合とか藤原紀香とか酒井法子とか。この人たちに1ミクロンも興味はないが、クドカン作品だったら絶対観る。
(文=吉田潮/ライター・イラストレーター)

●吉田潮(よしだ・うしお):
ライター・イラストレーター。法政大学卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。「週刊新潮」(新潮社)、「ラブピースクラブ」(ラブピースクラブ)などで連載中。主な著書に『2人で愉しむ新・大人の悦楽』(ナガオカ文庫)、『気持ちいいこと。』(宝島社)、『幸せな離婚』(生活文化出版)など。カラオケの十八番は、りりぃの「私は泣いています」、金井克子の「他人の関係」(淫らなフリつき)など。