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FRB議長も証言

黒田異次元緩和、副作用が露呈 ローン金利と物価上昇…インフレ、経済成長は起きない?

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(「足成」より)
 4月4日の黒田東彦・日本銀行総裁による“異次元金融緩和”が実施されて約3カ月が経過した。この間、徐々にそのリフレ政策によるデフレ経済からの脱却とインフレ率(消費者物価指数)の上昇という政策目標に、ほころびが見え始めてきている。

 確かに「異次元緩和」により、為替が円安に振れたことで大豆や小麦など輸入原材料の価格上昇を反映し、国内の食料品価格は上昇し始めている。また、原油など輸入エネルギー価格も上昇している。

 一方、本来は低下すべき長期金利が上昇していることで、住宅ローン金利が引き上げられるなど、国民生活に深刻な影響が出始めている。景気は各種の経済統計によれば心理的な面での改善傾向が見られ、期待インフレ値は上昇しているものの、実体経済の改善は遅れており、国民が最も頼りにする賃金の上昇については、ほとんど行われていないのが実態だ。

 黒田総裁をはじめとするリフレ論者は“マネタリーベース”(日銀当座預金と現金のこと)が増加することで、デフレ経済から脱却し、インフレを起こすことができると想定している。だが、世界中の主要先進国では、マネタリーベースが増加することでインフレ率が高まると考えている中央銀行はない。

 FRB(米国連邦準備制度理事会)のベン・バーナンキ議長は、米国議会証言で「中央銀行のバランスシートの規模(マネタリーベースが増加すること)とインフレ期待には全く関係はない」と証言している。米国では2008年以降、バランスシートの規模を拡大しているにもかかわらず、インフレ率は2%前後で推移、予想インフレ率も2%前後で推移しており、マネタリーベースが増加しても、インフレ率には変化が見られない。

 インフレ率の上昇を目的としてマネタリーベースを増加させている中央銀行は、先進国では日銀だけ。

 例えば、日銀の当座預金は08年11月時点で7兆円だったが、13年3月には47兆円まで約40兆円増加した。だが、この間のインフレ率は、10年4月の前年同月比1.6%の下落、13年2月の同0.9%下落と、ほとんど変化はない。

「異次元緩和」による円安がインフレ率を引き上げるとの見方もあるが、97年には1ドル=147円だったがインフレ率はゼロ%台、02年には1ドル=135円だったがインフレ率はマイナスだった。07年は前回の景気のピークだったが、1ドル=124円(最近の円の最安値)だったが、輸入物価指数は7.5%上昇したものの、インフレ率はマイナス0.3%だった。

 リフレ論者は、「デフレ経済下では、経済は成長せず、株価も上昇しない」とする。従って、インフレ率を上昇させることで、経済を成長させる必要があるとの主張だ。

 過去30年間で最も経済成長率が高かったのは、88年の7.1%。バブル経済時の86年-89年の経済成長率は年平均4.9%だったが、インフレ率はゼロ%台であり、戦後最長の景気拡大期となった02年1月から07年11月までのインフレ率は0.5%のマイナスとデフレ経済下だった。

 こうした事実を列挙すると、リフレ政策の過ちが明確だろう。インフレになっても経済が確実に成長するとは言えないのだ。それ以上に、FRBのバーナンキ議長が証言しているように、リフレ政策によってインフレは起こせない可能性が高い。

 しかし、日銀には切り札がある。消費者物価指数の基準年は5年ごとに改定される。この時に、消費者物価指数に採用される品目のウエイトが見直される。現在の消費者物価指数の基準年は10年で、次の改定は15年になる。この15年こそ、まさに日銀がインフレ率2%を達成すると公言している目標の年。日銀はいざとなれば、消費者物価指数に採用される品目のウエイトの見直しを変えることで、消費者物価指数の2%の達成を実現することも可能だ。
(文=鷲尾香一/ジャーナリスト)

BusinessJournal編集部

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