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「ダイヤモンド」vs「東洋経済」! 経済誌双璧比べ読み(6月第5週)

メディア、広告欲しさに強気投資勧める特集?狙いは顧客争奪戦で熱帯びる証券会社

post_2399.jpgアテンションプリーズ。(「Thinkstock」より)
 毎日の仕事に忙殺されて雑誌を読む間もないビジネスマン必読! 2大週刊経済誌「週刊東洋経済」(東洋経済新報社)と「週刊ダイヤモンド」(ダイヤモンド社)の中から、今回は「週刊ダイヤモンド」の特集をピックアップし、最新の経済動向を紹介します。

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「週刊ダイヤモンド 6/29号」の特集は『乱高下相場で勝ち残る! 賢い株の売り方&買い方』だ。「5月23日の暴落後も数百円単位の荒い値動きが続く株式相場。この乱高下相場で勝ち残るにはどうすればいいのか。その鍵は“売り時”にある。株は売って初めて利益が確定するからだ。売りそびれて含み損が拡大したり、売り急いでその後株価が上がったりしたら目も当てられない。“売り時”を見極めることができれば、乱高下相場はもう怖くない」という特集だ。

『特集Part 1 株投資の「六つの鉄則」であなたの悩みにズバリ回答!』『今は売るべき? 買うべき? 乱高下相場への正しい対処法』では、乱高下相場に巻き込まれた投資家へのアドバイスをまとめている。

『【悩み(1)】 暴落前に高値で買ってしまった。 損切りすべき?』という悩みには、過去の経験則から底値については、「下落幅は小さければ10~15%、大きくて20%」であり、直近の最高値1万5627円からみれば、20%安の約1万2500円までは“調整の範囲内”だという。

『【悩み(2)】 株価が暴落した後、底値と思って買ったがさらに下落、含み損を抱えた』という悩みには、「相場の乱高下が続いていて、相場観がつかめないのなら下手に動かない方がいい。ただ、買ったときと明らかに前提条件が変わっていて、株価回復が難しいとい考えるならさっさと売ることも考えるべきだ」とアドバイス。

『【悩み(3)】 暴落前に売りそびれたが、まだ含み益がある。今から売るべきか』という悩みには、“売り時”は多くの投資家が迷うところ、重要なのは「トレンドが変化する前に売買するから難しいのであって、変化してからでも良い」、それでも十分に間に合うという姿勢だ。

 ただし、「変化の見極め自体が難しいのが事実。利益を確実にしたいのなら多少の“取りはぐれ”は承知の上で、上昇途中で売って、利食いしておくとよい」

 こうしてみると、【悩み(1)~(3)】は明らかに“売り”のアドバイスだ。 米連邦準備制度理事会(FRB)による金融緩和政策の終了への言及や中国人民銀行によるシャドーバンキング(影の銀行)への資金流入抑制のための金融引き締め(記事には書かれていないが)など、前提条件が変わったことも大きな影響を与えそうだ。 証券会社と経済誌のアベノミクス狂争曲に乗せられた投資家にとっては「もっと早く言ってくれればよかったのに」と恨み節をいいたくなるアドバイスもある。

「【悩み(1)】 暴落前に高値で買ってしまった。 損切りすべき? 」では、過去の経験則からは、「大規模な財政支出が行われた場合は、1年で1.6倍程度になる」ために、日経平均株価でいえば、アベノミクス相場の起点を約8700円として、「50~60%上昇の約1万3000円~1万4000円がひとつのめどと考えられ、これを超えた段階では新規の買いを入れるべきでない」と今さらのアドバイス。

 また、『【悩み(2)】 株価が暴落した後、底値と思って買ったがさらに下落、含み損を抱えた』という相談には、「どうしても不安でじっとしていられない場合は、信用取引のできる銘柄であれば『つなぎ売り』という手もある」と保有している株と同じ株を信用取引で売る手法を「上級者向け」手法としてアドバイスしているが、もっと早い段階で信用取引の手法を紹介していれば、含み損を押さえられた投資家もいるのではないか。 このように、今回の特集の基本的な論調は「売り」かと思いきや、実は「買い」なのだ。

 『【悩み(4)】 相場に乗り遅れた。 今から買っても大丈夫か?』という相談には、「景気は上向きつつあり、企業業績は回復している。ここからさらに大きく株価が下落するとの予想は少なく、年末にかけて再び上昇する」と前向きなアドバイス。

 さらに『【悩み(5)】 長期運用したいがどう選ぶ? 途中で売っては駄目?』では、「割安かつ成長力のある銘柄を選んだ上で、投資する企業の業績は分散させたほうがいい」と投資は「短期」ではなく「長期」だという視点でアドバイスを行なっている。

『【悩み(6)】 バブル期に買って大きく下落した“塩漬け株”はどうすればいい?』では、ソニーを題材に、「ソニーに限らず業績が拡大基調にある時期であれば、程度の差こそあれ、株価は上昇する」。

 つまり、短期的には乱高下するために様子見ムード。長期的には「買い」というスタンスをとっているわけだ。 いったい、なぜ、強気な姿勢を続けるのか。それは、『特集Part 2 日本市場を翻弄する海外ヘッジファンドの裏側』を斜め読みをして、『特集Part 3 乱高下でもぶれない割安銘柄「NISA」の賢い使い方』を開いて謎がとけた。証券業界も経済誌業界も2014年1月から導入される少額投資非課税制度「NISA(ニーサ)」に向けて、動き出しているのだ。

 今年末で証券優遇税制が廃止され、配当や譲渡益に対する税率は10%から本来の20%に戻る。代わりに1月から導入されるのがNISAだ。NISAは英国で導入されているISA(Individual Savings Account=個人貯蓄口座)の日本版で、10年間年100万円まで上場株式、ETF(上場投資信託)、REIT(不動産投資信託)、公募株式投資信託などへの投資について、売却益や配当金・分配金が非課税となる制度。最大で同時に500万円(100万円×5年)までの非課税枠を持つことができる仕組みだ。 証券会社は来年1月の導入に向けて鼻息が荒い。というのも、NISAの対象となる投資はいずれも来年1月以降に新たに投資したものに限られる。そのうえに非課税口座は1人1口座を新規で作る必要があるためだ(4年間は金融機関を変更できない)。証券会社の顧客の奪い合いが始まる上に、経済誌にとっては証券会社の広告の奪い合いが始まっているというわけだ。

 今抱えている含み損を抱えた塩漬け株は売ってしまい、新しく1月から投資をNISA口座で長期投資を行なおう! こうした新たな広告キャンペーンがはじまったようだ。
(文=松井克明/CFP)

BusinessJournal編集部

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