NEW
「ダイヤモンド」vs.「東洋経済」! 経済誌双璧比べ読み(8月第1週)

出産・育児は渋谷区が得?高齢者が一番住みやすい街は?東京23区で介護難民あふれる懸念も

【この記事のキーワード】

, ,

  • このエントリーをはてなブックマークに追加


「Thinkstock」より
 「週刊東洋経済」(東洋経済新報社/8月3日号)は、「住んで損する街 得する街 212自治体 行政サービス徹底比較」という特集だ。

 「市町村は道路や上下水道などインフラ整備や清掃、消防、教育、福祉など、生活に直結する行政サービスを提供している。日本国内、どこに住んでいても一定水準のサービスが受けられるため、改めて意識する機会は多くない。しかし、地域性や財政状況に応じて、市町村が独自に設けている制度もある。独自の行政サービスを徹底比較」した特集だ。

 行政サービスは隣り合う市区でも違いが出る。

 例えば東京都中央区の場合、妊娠したらタクシー利用券1万円分、出産祝いには区内共通買物券3万円分が支給されるなど、子育て世帯に手厚い。認可保育園の保育料は月額2万5000円(第1子、3歳未満児で、前年度の所得税が17万円の場合)だ。一方で隅田川を挟んだ江東区は、妊娠・出産祝いは「なし」。認可保育園の保育料も月額3万6500円と割高だ。

 さらに、23区内でいえば、渋谷区では1人の出産につき8万円を支給する「ハッピーマザー出産助成金」という制度もあり、子どもを産み育てるなら、渋谷区内か、中央区がお得になる。

 また、子育て世帯向けでは、子どもの医療費助成も市町村間で差が出やすい。東京都では全市区が中学校卒業まで通院でかかった医療費の助成を受けられるが、神奈川県、千葉県では小学校低学年までという市も多い。例えば、東京・大田区では子どもの医療費助成(通院)は中学校卒業までだが、多摩川を挟んだ神奈川県川崎市では子どもの医療費助成(通院)は小学校1年までなのだ。

 上下水道料金も川を挟んで大きく違うことも。江戸川の東側・千葉県松戸市の上下水道料金は6679円だが、西側の東京都葛飾区は5934円。さらに、その上、埼玉県三郷市では、3611円と割安だ(口径20ミリメートル、24立方メートル使用した場合)。

 「金額に換算できない施策も、住民にとっては行政サービスとなる。流入人口の増加を狙い、保育所の充実や特色ある学校教育など、子育て世帯向けの施策を強化する市町村は多い。高齢者に住みよい街づくりに力を入れるところもある」という。

 今回は、東洋経済が毎年発行している「都市データパック」のデータを基に、「出産・子育てしやすい街ランキング」を首都圏、関西圏で作成している。

 首都圏の1位は東京都武蔵村山市。「認可保育所定員数や都市公園面積などが評価された」。以下、2位=東京都府中市、3位=東京都青梅市、4位=東京都あきる野市、5位=千葉県富津市、6位=東京都東大和市、7位=東京都稲城市、8位=東京都昭島市、9位=東京都福生市、10位=東京都多摩市となった。トップ10は、5位の千葉県富津市(富津市は認可保育所の定員数が5230人とダントツの1位)を除き、東京西部の市が独占した。なお、月額保育料の安さで1位となったのは渋谷区で1万2700円だ(ランキング自体は68位)。

 一方、関西圏では、和歌山県有田市と同県橋本市が1、2位を占めた。有田市は保育所定員数(6158人)と月額保育料(3万9000円)で1位となっている。3位は兵庫県たつの市で、傾向として郊外の市がランキング上位となった。

 「高齢者が住みよい街ランキング」や「安心・安全な街ランキング」「裕福な街ランキング」もある。

 「特集PART2 あなたの街の医療・介護は大丈夫か」では、2030年の医療の地域格差を予測している。ここで気になるのは、30年に医師不足危険度が高まるのは、大都市圏、しかもベッドタウンということだ。というのも、ベッドタウンほど高齢化が進むものの、それに見合うだけの医療が提供できなくなるおそれが高まるのだ。

 首都圏の医師不足危険度では「医師不足が深刻化」する地域として、武蔵村山市、青梅市、あきる野市と、先ほどの「出産・子育てしやすい街ランキング」で上位にいた郊外の街が次々に名を連ねているのだ。出産・子育てしやすい街は住民が若い街で、将来的には医師不足になりかねないということか。

 このほかにも、「介護難民危険度が高い街」では、30年には、東京23区の全域が入所困難状態に、愛知県も豊田市などの工業団地を中心に介護難民危険度のレッドゾーンに突入すると指摘する。一気に高齢化が進むのだ。

 神奈川県と埼玉県は、10年から40年にかけて、75歳以上人口が2倍以上に増加。千葉県も2倍近い伸びで、東京都、大阪府、愛知県は7割を超す増加と、いずれも全国平均56%を大きく上回り、行政サービスが追いつかない。戦慄の内容だ。

 今回の特集は、行政サービスを徹底比較して、各地方行政に競争を促し、また将来的な危険度を目に見える形で表しており、かなりの労作で評価ができる。
(文=松井克明/CFP)