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政治経済はどうなってる? 近くて遠い韓国“他人の餅” 第8回

アニメにアイドル…日本のサブカル、韓国に浸透の理由と舞台裏〜オタクが切り開く日韓友好

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TVアニメ『進撃の巨人』公式サイトより
 領土問題や慰安婦問題などで何かと対立し、一気に冷え込みつつある日韓関係。先日もサッカー日韓戦における横断幕をめぐって論争が起きるなど、韓国における対日感情は悪化するばかりだ。

 ところが、その韓国でテレビをつければ、『女王の教室』(日本テレビ系)、『愛なんていらねえよ、夏』(TBS系)など、日本で人気を呼んだ名作ドラマたちが、次々とリメイクされてオンエアされている。それも主演女優はコ・ヒョンジョン、ソン・ヘギョなど大物ばかり。『冬のソナタ』(韓国・KBS)で日本でも人気を博したチェ・ジウも、『家政婦のミタ』(日本テレビ系)のリメイクに主演することが決まった。

 昨今の日韓関係の冷え込みもあってあまり論じられないが、今年は、韓国で日本の大衆文化が開放されて15年目となる節目の年。1998年に韓国で公開された岩井俊二監督の映画『Love Letter』(日本ヘラルド映画/95年)は、日本文化開放の第1世代を代表する記念的象徴として、今もたくさんの韓国人が覚えている作品だ。

 この映画を皮切りに、2004年からは音楽、ゲームなどを全面的に開放。今や、あらゆる日本の文化が韓国に流れ込んでいる。特にマンガやアニメ、ゲームのような日本のサブカルチャーはインターネットが普及した00年前後からその勢力を拡大。しかも持続的にそれらを消費する、いわゆる「オタク」と呼ばれる者たちも現れた。

 「オタク」という概念は韓国でもすっかり定着して、「オタク」を韓国風に発音した「オドック」もしくは「ドック」(オを省略)といった造語も生まれたほど。かつては主流メディアから、ネガティブなことばかり報じられた「オドック」だったが、今は「何か夢中になれるような趣味を持つ人」を指す名詞として、韓国でも一般的に定着している。従来の「マニア」「○○狂」「愛好家」という言葉の代わりに、「オタク」もしくは「オドック」と表記する場合が多くなってきたのだ。

 けれどオドックが持つ本質は、趣味への夢中度ではなく、主に日本のサブカルチャーに持続的に接したり、それに関連する消費行動をしたりすることにある。メディアは相変わらず彼らの社会的・経済的位置や政治的可能性にのみ注目するだけで、彼らの精神的支柱とも いえる“日本のサブカルチャー”には無関心だった。

●影響力を拡大する日本のサブカルチャー

 とはいえ、最近韓国で社会的に話題となっているアニメ『進撃の巨人』現象のように、もはや日本のサブカルチャーが韓国社会に大きな影響を与えていることを無視するわけにはいかない状況になっている。

 マンガ、アニメ、ゲーム、ライトノベル、アイドル、特撮、フィギュア、同人誌、ボーカロイドなど、探してみればオドックたちは、さまざまなジャンルで静かに活動している。しかも『新世紀エヴァンゲリオン』(テレビ東京系/庵野秀明監督)、美少女、ゲーム、メカ、TYPE-MOONなど、カテゴリーのすみ分けは、どんどん細分化されていくばかりだ。

 例えばアニメ。日本でも大ヒットした『けいおん!』『らき・すた』『魔法少女リリカルなのは』『魔法少女まどか・マギカ』『THE IDOLM@STER』『とある科学の超電磁砲』などには、韓国で根強いファンが存在する。原作のマンガやノベライズ、DVDボックス、ブルーレイディスクなどの購入は基本中の基本。日本語を勉強してわざわざ東京にやってきて、秋葉原などでフィギュアやグッズにお金を注ぎ、それを自己満足の源とする者たちも多い。

 熱狂的なオドックになると、日本で年に2回開催されるコミケ(コミックマーケット)にも出動。しかも、作品に出た場所を訪れて写真を撮る“聖地巡礼”も欠かせない。『魔法少女リリカルなのは』が韓国ではやった時には、キャラクターのひとりである「フェイトと自分は6年間“恋愛中”だ」というオドックが、あるテレビ番組に出演。フェイトの抱き枕と一緒に町でデートを楽しむ彼の姿は海外の新聞にも紹介され、韓国国民を驚愕させたこともあった。

 また、別のある男性は『魔法少女まどか・マギカ』の暁美ほむらと結婚し、新婚生活を送っているという妄想生活をテレビで公開。暁美ほむらの抱き枕にキスをしたり、話しかけたりする彼の姿を見た韓国の視聴者は、日本のサブカルチャーがそこまで大きな影響力を与えることに言葉を失ったほどだ。

●ネットを通して韓国に流入

 日本に比べれば、配信される情報はとても少ないが、彼らがそこまで傾倒できるのは、やはりインターネットの力が大きい。韓国ではアニメ雑誌「ニュータイプ」と「娘(ニャン)TYPE」の韓国語版が正式に発売されているが、彼らがより早く情報を入手できるのは、ネット上に存在するアニメーションコミュニティのおかげだ。ポータルサイトNAVERには、30万人規模のアニメコミュニティが存在し、日本から配信された情報を随時確認できるのだ。

 日本でも動画サイトを通じてK-POPが紹介されたように、韓国でもまた、YouTubeやニコニコ動画を通じて日本のサブカルチャーが浸透してきている。

 その代表的なものが、最近人気のボーカロイド・初音ミクだ。韓国では初音ミクを使ってコンテンツを創作することは少なく、日本で人気の曲をブログに紹介したり、イラストを描いてアップしたりする単純な2次創作がほとんどだが、その人気は根強く圧倒的だ。韓国ではまだ一般に知られていないボーカロイド文化だが、11年8月に韓国で行われた上映会「初音ミクLIVE PARTY 2011 in 札幌」のチケットは、6分で全座席ソールドアウト。また韓国語の会話が可能なボーカロイド「シユ」が誕生するなど、初音ミクはオドックの間で大きな影響力を持つ。

 もちろん現実のアイドルにも、オドックは存在する。例えばAKB48は、日本だけでなく、韓国を含めた全世界的にオタクをつくり上げるグループといっても過言ではない。YouTubeを通じて全世界へ配信される総選挙の結果に一喜一憂したり、メンバーの卒業、スキャンダルなどのニュースがあるたびにTwitterや韓国のファンコミュニティは大きく揺らぐ。韓国のオドックたちは、秋葉原のAKB劇場への聖地巡礼の旅に出たり、メンバーに韓国式のあだ名をつけたりと、愛情を注いでいる。

 ちなみに、前田敦子は敦子をそのまま韓国読みして「トンジャ(敦子)」、高橋みなみは総監督と同じ意味を持つ「トゥモク(頭)」、横山由依は韓国料理の純豆腐(スンドゥブ)好きなことから「スンドゥブ」、柏木由紀は2ちゃんねるでもアンチがいないという理由から「2ちゃん大統領」、小嶋陽菜はAKBメンバーの中で、唯一全シングルのメディア選抜に選ばれていた(「永遠プレッシャー」では、外れている)ことから、「チャングンニム(将軍様)」と呼ばれている。