NEW

“タカウレ”商品、注目の高まりは景気回復の予兆? 仕掛ける企業の狙いと裏側

【この記事のキーワード】

,

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

こんなのでお尻はふけない… 望月製紙 HPより
 アベノミクスによる円安・株高によって、日本経済にも潤いが出てきた。2020年の東京オリンピック招致にも成功し、ようやく本格的に景気も上向いていく予感がする今日この頃、意外にもデフレ時代から頑張っている「タカウレ商品」がある。その魅力を探ってみた。

●「タカウレ」商品に注目した、「AERA」と『はなまるマーケット』

 「タカウレ」(日常品にもかかわらず、高くても売れている)商品についてメディアが注目したのは、週刊誌「AERA」(朝日新聞出版/4月15日号)の特集「高くて売れる『タカウレ』商品の知恵」が、2013年ではおそらく最初のことだろう。掲載されているのは、ここ4~5年にわたって売上が好調な商品について、開発秘話や担当者のコメントが掲載されている。

 そのキーワードは「非日常」、“買い替えができない”“ほかとは比較できない”といった「オンリーワン」、「健康志向」や「非合理・不便に対応」といった、これまでのマーケティングの業界では、比較的なじみのある言葉が並んでいた。それ自体はさほど珍しいことではないといえる。

 そして、「AERA」が発売されてから約1カ月経過した5月1日、平日放送されている情報番組『はなまるマーケット』(TBS系)にて「タカウレ商品」が改めて紹介され、注目されることとなった。

 このふたつのメディアで取り上げられた「タカウレ」商品とは、通常販売されている商品でありながら“ちょっとした高級品”というレベルではない価格のものだ。例えば、25gで5万2500円のスキンケアクリーム「資生堂クレ・ド・ポー ボーテ(CPB)ラ・クレーム」、1万2600円の高級ビニール傘「テラ・ボゼン」、そして3ロール5000円の皇室献上品トイレットペーパー「羽美翔[蝶]」等、通常よりも1ケタ、いや2ケタ価格が違うシロモノだ。これらの高価格品が、意外にも売れているというから驚きだ。では、これらが売れている背景について探ってみよう。

●顧客の深層心理をとらえるモノづくりで復活した「CPBラ・クレーム」

 多くの化粧品ブランドを抱えている資生堂だが、その中の最高級ブランドが「クレ・ド・ポー ボーテ(CPB)」だ。「STAY YOUNG」というコンセプトを掲げたブランドとして、1982年に誕生。当時の日本経済は右肩上がりの時代でもあったことから、多くの女性たちから熱い支持を集めた。しかし、2000年代に突入した頃から“年を重ねてから使うブランド”というイメージに変化し、売り上げは減少していった。

 そこで、2010年から資生堂ではCPBの復活を目指して、ブランドそのものを一新するための活動をスタートさせた。ブランドをリバイバルさせるために、CPB岡部義昭ブランドマネジャーは、日本・アジア・欧米で徹底的に調査し、女性が高級化粧品を購入する理由は、「仕事で最高の結果を出すために、自分を磨き上げておくための投資である」ということに気付き、コンセプトを改めてモノづくりを進め、完成したのが現在の「CPBラ・クレーム」だ。そして見事に資生堂最高品質ブランドに返り咲くことができたのだ。

●困難な命題に挑戦した職人魂が結実した「テラ・ボゼン」

 「テラ・ボゼン」は、正装の正絹素材高級法衣を極力雨に濡らしたくないという僧侶の方々の願いから、開発がスタートした。しかし、この要望は非常に困難な命題を突きつけたのだ。

 まず、墓前読経であるから、周囲参列者から読経中の僧侶がよく見える透明なビニール傘でなくてはならないし、できるだけ濡れないように大判でなくてはならない。さらに、 極力軽量かつ耐久性にも考慮すべきとの要望。そして、最大の課題は、一般にビニール傘というと、素材がベタベタくっついて開きにくくなるものだが、透明であってもくっつきにくい素材を厳選するということだった。そこで、ビニール傘専門店ホワイトローズ社の傘職人・須藤宰氏は、ゴルフ傘などの過酷な使用に耐えられるFRP素材を多用し、ビニール部分には、傷つきやベタつきがなく、焼却処理で水・二酸化炭素に分解する環境にやさしい透明素材、特殊オレフィン系多層フィルムを採用した。そして、重さ680g、実効直径140cm、閉じた全体の長さ112cmの墓前読経専用傘「テラ・ボゼン」が誕生。記念すべきシリアルナンバー1は、東京・本願寺に納品された。

 しかし、墓前読経でクリアされた課題、「テラ・ボゼン」の機能性は、やがて映画・ドラマの撮影、ゴルフ、そして選挙演説など、様々な屋外イベントで注目されるようになる。実際、寺院だけではなく、東映太秦映画村や映画の撮影場所、鈴鹿サーキット等からも注文が舞い込むようになった。トム・クルーズの来日の際にも「テラ・ボゼン」が使われたことで、様々な業界から注目を集める「プロ御用達の傘」となったのだ。

●皇室献上品というグレード感を味わえる「羽美翔[蝶]」

 「羽美翔[蝶]」が注目されたのは、皇室献上品として、職人がその日の天候に合わせて、製造する機械を調整してやわらかさを追求した、上質な肌触りの最高級トイレットペーパーであるからだ。飲料用にも使われている仁淀川の清流を使用し、カナダ内陸部の木の最高級パルプを使用していることもあるが、話題となったのは、タレント・コラムニストのマツコ・デラックスが、お笑いタレントの明石家さんまの誕生日プレゼントとして贈ったことがテレビ番組で放送されたことだろう。

 確かに、「羽美翔[蝶]」のようなトイレットペーパーを日常に利用するセレブは、ほとんどいないと思われるが、このようなサプライズプレゼントならば、3ロール5000円は決して高い買い物ではない。しかも、そこについているのは「皇室献上品」という日本で最高のグレードを示すものだからだ。

●全体に占める割合はごくわずかだが、景気の上向きを予感させる

 このように「タカウレ」商品は、各々製品に対するこだわりが凝縮されている。しかし、これが社会一般に広まっているというわけではなさそうだ。「クレ・ド・ポー ボーテ」は以前からあったブランドのリバイバル、「テラ・ボゼン」や「羽美翔[蝶]」にいたっては、職人の手作りによる限定品であり、販売される数も決まっている。つまり、既存の商品を押しのけてシェアを奪うような勢いで売れているわけではない。

 ただし、このような高級品、最高級ブランドやこだわりの一品というものが注目されることは、やはり本格的に景気が上向いていくことを世の中のいろんな人たちが予感している証しである。そして本格的な景気回復になることは、日本国民共通の願いでもあるのだ。
(文=大坪和博)