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J.フロント、松坂屋跡地へのパルコ出店で “脱百貨店戦略”加速〜岐路に立つ百貨店業界

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松坂屋上野店(「Wikipedia」より/おんさき)
 J.フロントリテイリングは8月、東京・上野の松坂屋上野店南館を閉店して建て替える新ビルに、グループ企業のパルコが出店すると発表した。2014年3月に南館の営業を終了し、17年秋にパルコが開業する。

 現在の地上7階建ての南館は地上23階、地下2階建ての複合施設となる。延べ床面積は約4万2000平方メートルの予定。パルコは地上1~6階に入居する。シネマコンプレックス(複合映画館)大手のTOHOシネマズが7~10階に、12~22階はオフィスのスペースになる。地下1階では大丸松坂屋百貨店が食品売り場を運営する。本館も全館改装する計画で、南館の売り場を順次移管し、14年3月にグランドオープンする。総事業費は約200億円。

 現在の松坂屋上野店の客層は50~60代が中心。都心部でファッションビルを運営してきたパルコが、20~30代が支持する衣料や雑貨のテナントを集めることで、客層を広げたいとしている。

 6月末に閉鎖した松坂屋銀座店の跡地では、銀座地区で最大規模の複合商業施設を17年に開業する。また、J.フロントは関西主力店である大丸心斎橋店の再開発も検討している。

 銀座パルコの可能性についてJ.フロントの山本良一社長は10月8日、「来客層などを総合的に考えてパルコは出店しないと判断した」と述べた。大丸心斎橋店についてはパルコ出店の可能性が残る。J.フロントは「脱・百貨店」を目指しており、その具体策が百貨店のパルコ化。J.フロントとパルコが店舗開発段階から協力するのは、上野が初めての試みだ。

●曲がり角を迎えた「百貨店」という業態

 J.フロントが脱百貨店を急ぐのは、従来の百貨店の業態では競争力を失ったからだ。今年に入り、安倍政権の経済政策・アベノミクス効果で都心の百貨店は高額の時計・宝飾、海外ブランド品が売れ、久々に活気を取り戻した。

 大丸松坂屋百貨店の直営店舗では明暗が分かれた。店舗別売上高の対前年増減率は15店舗の3~8月累計で7.0%増と好調だった。なかでも大丸東京店は35.6%増、松坂屋名古屋店は11.5%増と2ケタの伸びを記録した。

 しかし、高額ブランド品ブームの追い風が吹かなかった松坂屋上野店は1.6%の減。大丸心斎橋店も0.9%減と振るわなかった。

 松坂屋上野店は、南館を建て替えてパルコ化する。大丸心斎橋店の再開発でもパルコのノウハウを生かし、手薄な若者客を呼び込むことにした。

●J.フロントのパルコ効果

 全国百貨店協会加盟百貨店全社の売上高は1991年に9兆7000億円を上げていたが、バブル崩壊後はマイナスが続き、12年は6兆1000億円と4割も減少した。そのため、J.フロントは東急ハンズやポケモンセンター、若い女性向けブランドを集積した「うふふガ―ルズ」など、テナント形式の店舗の誘致を積極的に進め、自社社員を極力減らす「新・百貨店モデル」を推進してきた。

 この脱・百貨店戦略の柱に据えるべく、パルコを買収した。都心でファッションビルを経営しているパルコは、若者向けのテナント運営のノウハウを持っているからだ。大株主のイオンと対立しているパルコは、J.フロントの傘下に入ることを受け入れた。

 J.フロントは12年2月、パルコの筆頭株主だった森トラストの持ち株33.22%すべてを譲り受け、パルコを持分法適用会社にした。続いて同年8月、株式公開買い付け(TOB)を実施して日本政策投資銀行が保有する18.71%を取得して、パルコを子会社にした。パルコは同年9月からJ.フロントの連結決算の対象になった。パルコ効果は大きかった。

 J.フロントの13年2月期の連結売上高は前年同期比16.1%増の1兆927億円と、09年2月期の売上高1兆966億円とほぼ同じ水準まで回復した。パルコによる増収効果(6カ月分)は1400億円に上った。13年3~8月期連結決算ではパルコ事業の売上高は1312億円で、全体の売上高5586億円の23%。営業利益は58億円で全社全体の179億円の32%を占めた。パルコが業績に貢献していることがよくわかる。

 パルコを子会社にしたことについてJ.フロントの奥田務会長兼CEO(当時)は、「新しいテナントを見つけてくる力、売り場を編集して新しいコンセプトを付加する力など、パルコの感性は非常に斬新で優れている」と高く評価した。

 J.フロントは、パルコを脱・百貨店の推進力と位置付けている。松坂屋上野店の南館の新ビルにパルコが入居して、パルコ流で百貨店の再生を図る。アパレル業界には、「百貨店の生命線だったMD(商品政策)力を放棄して、テナント収入を得る不動産業に転換した」との批判的な見方もあるが、今回のJ.フロントのパルコ化戦略は、今後の百貨店業界の行方を占う上で、重要な意味を持っている。
(文=編集部)