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坂口孝則「ダマされないための“儲けのカラクリ”」 第20回

コンビニ批判、メディアによる掲載拒否の実態〜ある店舗の接客を本社に“指摘”すると…

文=坂口孝則/未来調達研究所取締役
コンビニ批判、メディアによる掲載拒否の実態〜ある店舗の接客を本社に“指摘”すると…の画像1ミニストップ茨木真砂店(「Wikipedia」より/Kirakirameister)

 さまざまなテレビ番組や雑誌などでもお馴染みの購買/調達コンサルタント・坂口孝則。いま、大手中小問わず企業から引く手あまたのコスト削減のプロが、アイドル、牛丼から最新の企業動向まで、硬軟問わずあの「儲けのカラクリ」を暴露! そこにはある共通点が見えてくる!?

 なんでも批判の対象とする、と喧伝しているジャーナリズムでさえ、聖域がある。コンビニエンスストアだ。雑誌などの出版物を販売してもらう関係上か、コンビニを否定的に扱うメディアは少ない。もちろん、報道する側の過剰な恐れであるかもしれないものの、ある種タブー視されている。

 ためしにいくつかのメディア向けに執筆した原稿でコンビニについて触れたところ、編集者から削除依頼を受けた。特定のコンビニチェーンを、どちらかというとホメた原稿でも、他のコンビニチェーンへの配慮からか控えたほうがよいとも指摘された。

 コンビニが現在の日本を支える小売業態であるのは間違いなく、消費者としてメリットが多い。それと同時に、もし問題があれば、建設的な指摘をすべきだと私は思う。

 たとえば、先日某誌に掲載を拒否された原稿は、次のようなものだ。

「先日、ミニストップ麻布十番店に行った。前のお客が料理を注文すると、たったひとりの店員は店奥に行き、まったく戻ってこない。4分ほど経った。私がレジから覗きこみ『まだ調理に相当な時間がかかるの?』と訊くと『はい』とおっしゃる。『そのあいだにレジはできないの?』と訊くと『できません』。

 私をはじめ並んだ客は呆れて出て行った。『街角あなたの憩いの場』がミニストップのキャッチフレーズだが、なるほど、たしかに楽しいひとときを過ごせた。ありがとう、ミニストップ。お客と接する機能がストップしているのかと思った」

 とまあ、こんな感じの原稿だった。後半は感想だけれど、前半の事実もダメのようだ。

●消費者と小売りのあるべき関係とは?

 ところで、原稿には書かなかったけれど、後日談がある。

 私はミニストップ本社に連絡をした。もちろん、クレーマーではない。ただただ事実を書き、「とても失望したので、ご連絡差し上げるしだいです。なお、私は『こうすべきだ』という意見はありません。ただただ、失望しました」と送った。

 すると、その数日後、あきらかにその店舗の接客態度が向上した(もともと接客自体が悪くはなかったが)と家族から聞いた。そしてその夕方に、ミニストップ本社よりメールが届いた。

 そのメールの文章は私のものではないので、引用は控える。ただ、そこには丁寧に改善を約束することと、これから繰り返さないことが書かれていた。そしてそれは実行されたようだ。

 私はミニストップにこっそり行って、ビールをたくさん買った(まあ、私の顔などわかりもしないだろうし)。気のせいかもしれないし、おこがましいけれど、たしかに接客サービスは上がった気がする。近くのコンビニで迷ったときは、ミニストップを選択する。バカげたことだろうか。

 そうかもしれない。

 ただし、指摘が改善につながり、それにより消費者がより購買に向かう–この良き関係が必要だと思うのだ。
(文=坂口孝則/購買・調達コンサルタント、未来調達研究所株式会社取締役)

坂口孝則/未来調達研究所取締役

坂口孝則/未来調達研究所取締役

大阪大学経済学部卒業後、電機メーカー、自動車メーカーで調達・購買業務に従事。調達・購買業務コンサルタント、研修講師、講演家。製品原価・コスト分野の専門家。サプライチェーン分野の知識を使い、ものづくり領域の先端解説などを行う。
未来調達研究所

Twitter:@earthcream

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