例えば、読売ジャイアンツは2010年からグラウンドで憧れの選手たちと記念撮影ができたり、特製スイーツが配られたりする特典の付く女性専用席「Girls’ Giants Seat」を設置。今季は、主催試合のうち15試合に導入した。ほかにも、女性向けの野球応援サイトをつくるなど、積極的に女性ファン向けのサービスを展開している。球団関係者によると、
「ヒーローインタビューに上がった選手との記念撮影や、イニング間に『Girls’ Giants Seat』がオーロラビジョンに映し出されるなどのサービスが好評で、売れ行きは好調です。また、来年以降も女性向けのサービスを増やしていく予定です」
という。
千葉ロッテマリーンズは特定の日を「ガールズデー」として、チケットの割引や女性限定イベントなどの特典をつけており、横浜DeNAベイスターズは今季、金曜日を「女子割の日」として入場料を割引きしたり、「女子シート」「占いBOX」といった女性ファン獲得のための施策を次々に打ち出している。
各球団のグッズには、女性向けのカバンに収納しやすい小さなメガホンや、女性が好きなピンク色系のグッズ、キャラクターとのコラボグッズが多くある。昔は、女性がファンになっても選択肢が多くなかったグッズ。今は「可愛い」「持ちやすい」「おしゃれ」という女性的な視点でも選べるようになっているのだ。
“野球女子”も多様化しつつある?
各球団の営業努力もあり、スタジアムには明らかに以前より女性の観戦客が多くなった。急増する“野球女子”だが、その生態も多様化している。中でも多いのが、次の4タイプだ。
・「集団でワイワイ観戦する派」…とにかく一喜一憂。立って応援する。いつの間にか仲間が増える
・「内野からじっくり見守る派」…立ったり座ったりはしんどいから、座って観る。細かいところまで良く見ている
・「内野からストーカー派」…とにかく近いところで見たい
・「内野で観戦しながらカメラ撮影派」…望遠レンズ付きの一眼レフ装備
上記のうち複数のカテゴリーに属する積極的な女性もいるが、筆者のように内野席で“ひとり観戦”している女性も少なくない。 ひとりだと話す相手がいないので、色んなことに興味が湧いてくる。これが外野席での観戦になると少し様子が違ってくる。いつの間にか周囲の人とも仲良くなり、帰るころにはお友達……というようなケースも少なくないのだ。
さらには、応援。北海道日本ハムファイターズと埼玉西武ライオンズの応援ソング(チャンステーマ)には、女性パートがある。多くの女性が声を出さなければ、その応援は成り立たない。ましてやチャンス時だから、この応援によって選手のテンションも多少なりとも違うはずだ。この応援がまた、やってみると意外と楽しい。よく見ると、応援団にも女性が増えた。
スタジアムに集まる女性たちは、単純に「野球が好き」という理由だけではない。「応援が楽しかった」「カッコいい選手がいた」「マスコットが可愛かった」……。女子が野球観戦にハマる要素はごろごろと球場に転がっている。個人的には、女性向けのマニアックな野球ルール講座や、ユニフォームのオリジナルオーダーの受付、各球団が推すイケメン選手のイベントなど、もう少し各球団が独自の女性向けサービスを展開してくれれば、それぞれのスタジアムに「○○女子」が増えると思う。
各球団の関係者の皆さま、来シーズンは“勝利の女神”たちがスタジアムにたくさん来るようなステキな企画をお願いします。
(唐沢彩野/Sportswriters Café)