パワハラやセクハラなどを起こす主役も、勘違いしたワンマン社長やその“虎の威を借りた”管理職に多く、そうした企業の多くはやはり歴史の浅いところが多い。しかし、それが日本で有数の金融機関である三井住友トラスト・ホールディングスで起こったとなれば、あまりにも驚きだ。
三井住友トラストは、日本最大の信託銀行である三井住友信託銀行を傘下に持つ超有名企業であり、超優良企業。その三井住友トラストで、パワハラが発生した。それも、主役は代表権を持つ取締役の一人だ。さらに、パワハラというのが、部下への暴力だった。
暴力は多くの部下がいる前で行われた。被害者の同僚たちが暴力の行われた場面を見ている。被害者はこの暴力に対して、社としての厳正な処分を求めた。もし、適正な処分が行われなかった場合には、訴訟を起こす意思を示し、暴力を目撃した同僚たちに、その際には暴力の目撃者として協力してほしい旨を求めている。
しかし、問題なことに、社による適正な処分が行われなかった。結局、パワハラを行った代表取締役の処分は、“厳重注意”で済まされた。ただし、本当に当人に対して“厳重注意”が行われたのかは、定かではない。
そこには、三井住友トラストが旧住友信託銀行と旧中央三井トラスト・ホールディングスが合併したことにより、企業としての倫理観の低下やガバナンスが機能しなくなったのではないかとの指摘もある。
そして、日本有数の銀行首脳が行った暴力というパワハラは、処分も曖昧なままに封印されようとしている。
(文=鷲尾香一)