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安部徹也「MBA的ビジネス実践塾」第11回

苦境マック、乗り越えるべき2つの壁 強みのクーポンと調達システム、一転して弱みに

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マクドナルドの商品
 8月5日、日本マクドナルドホールディングスが発表した7月の業績に衝撃が走りました。なんと、全店売上高ベースで前年同月比18%もの落ち込みを記録してしまったのです。7月、中国食肉加工工場が使用期限切れ鶏肉を使用していたことが発覚し、同工場から仕入れた原料を使用していた「チキンマックナゲット」など8品目の販売を一時停止。顧客がマクドナルドを敬遠した結果が、数字に如実に表れた格好となりました。

 マクドナルドにとっては、ここ最近続く業績不振から脱却を図るために、デリバリーの強化や家族連れにフォーカスするなど、さまざまな試みに取り組んでいた矢先に起こった問題。結果として、イメージ悪化は避けられず、来店客数減は長期化する恐れもあります。

日本マクドナルドホールディングスの月次業績推移:2013年8月~14年7月(縦軸の単位:%、出典:「同社 月次セールスレポート」より)

 このような重大な局面に立たされているマクドナルドですが、このピンチから脱出する道は実にシンプルです。それは、ビジネスの原則に基づいて、「お客様が望むものを、望む価格で、望むタイミングで提供する」ことです。ただ、このシンプルな原則を実現するために、マクドナルドは2つの大きな壁を超えなければならないでしょう。

(1)「サンクコスト」の壁

 マクドナルドの一つの大きな武器はクーポンにあります。通常価格では高い商品も、クーポンを利用すれば、大変お得な価格で購入することができます。このクーポンシステムに関して、同社の原田泳幸前社長は2010年6月14日付日本経済新聞の取材で次のように述べています。

「一番効果があったのは(携帯電話に割引クーポンを配信する)eクーポン。それまでは3カ月先を予約して新聞に折り込みクーポンを入れていた。それが今なら『よし、今週末やろう!』とすればすぐできる。雨が降ったらやろう、と。スピードと精度が高まる。eクーポンを店頭でかざせば情報を吸い上げられるので、こちらでは消費者の購買履歴がわかる。現在は携帯会員が1800万人まで増えたので、今後はセグメンテッドマーケティングができるようになる」

 同記事では、マクドナルドがIT投資にそれまで300億円もの大金を投じ、これから収穫期に入ることが伝えられています。

 確かに割引価格で購入できるクーポンは、売り上げをアップさせる効果がありますが、大抵一時的なものであり、その後に襲ってくる副作用で業績が蝕まれていきます。顧客はクーポンで購入する価格が基準となり、定価で購入するのは損だと感じて、クーポンがなければ購入しなくなるのです。また、クーポンに釣られる顧客は価格に敏感であり、ファンにはなりにくく、他に安い商品があれば躊躇なく離れていく傾向があります。

 例えば、長崎ちゃんぽんのチェーン店を展開するリンガーハットは05年、さらなる飛躍を目指すためにマクドナルドで社長を務めた八木康行氏を社長として招聘します。八木氏はマクドナルドで売り上げアップ効果のあったクーポン戦略をリンガーハットに導入。通常価格が450円のちゃんぽんや皿うどんがクーポンを利用すると100円引きとなり、わずか350円で食べられると人気を博して一定の効果が上がりました。