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広がる人身売買ビジネスの実態 多数の幼児「生産」、誘拐や臓器売買など悲惨な例も

文=編集部
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広がる人身売買ビジネスの実態 多数の幼児「生産」、誘拐や臓器売買など悲惨な例もの画像1「Thinkstock」より
 タイの首都・バンコクのコンドミニアムで、日本人男性が複数の代理母に出産させたとみられる9人もの幼児が保護された事件。その後、幼児の数は調査が進むとさらに増えて計15人が確認され(8月17日時点)、その人数はまだまだ増えそうな様子である。

 本事件の発覚当初は人身売買目的とみられていたが、幼児に高い水準の養育費が支払われていたという情報もあり、人身売買目的ではなく節税目的ではないかとの臆測も流れている。さらに、この日本人男性が若き富豪だとか、某大手上場企業の息子ではないかという情報も流れており、事件の真相に注目が集まっている。

 本事件で注目を浴びた幼児の人身売買であるが、一般的にはどのように幼児を売買して利益を得るのだろうか。そこで今回、人身売買について長く取材してきた記者などと共に、幼児の人身売買ビジネスの実態について調べてみた。

巨大マーケットは、欧米諸国への「国際養子」

 人身売買には、さまざまな種類がある。最も代表的な例が、若い女性が騙されたり誘拐されたりして海外に売られてしまうケースだが、被害は現在でも多く発生しており、特に東欧諸国の女性などが多く被害に遭っているという。

 一方で幼児の人身売買の場合は、海外へ「国際養子」に出すというかたちを取ることで比較的容易に合法を装えるため、ニーズがある程度は大きいという。例えばアメリカで子供を欲しがっている家庭に、アジアの国の子供を「国際養子」として提供し、その謝礼金を得るというようなかたちでビジネスが成立している。

 アメリカでは養子縁組は社会一般に広く浸透しており、キリスト教団体などを通じて国際養子縁組が斡旋されることが多い。この際、白人の子供を迎えるとなると、その親はドラッグ中毒やアルコール依存症であるケースが多く、それが子供にも影響していることもあるため敬遠されやすい。そこで、比較的ドラッグやアルコールのリスクが少ないとされるアジアの子供は、養子縁組が成立しやすい。養子縁組が成立すれば、通常は養子を提供した親に数万ドルの謝礼が支払われることが多く、それが養子を出す側の利益となる。

幼児を「生産」する例も

 このような実態がある中で、一部では養子に出すための幼児を「生産」して儲けようとする動きもある。10年以上前、関東近郊のある地域ではキリスト教系を名乗る団体が中心となり、代理母となってくれる女性を集め、その女性達に子供を出産させていた。子供はキリスト教系団体の斡旋を通じてアメリカの家庭に養子縁組させられ、その家庭が支払った謝礼金がブローカーや代理母への報酬となっていたといわれている。

 しかしこのようなビジネスは、日本よりも安い謝礼金で済む中国や東南アジアの国々などが台頭し、現在日本ではほぼなくなり、他のアジアの国々で増加傾向にあるといわれている。このように多数の代理母によって出産された子供たちが「国際養子」として、合法を装って海外に流れていくというのが幼児の人身売買では多いケースとなっている。

 人身売買の取材歴の長い人物は、国際養子の実態について次のように語る。

「受け入れ先が温かい家庭で、そこで可愛がられて幸せに暮らせることも多く、養子が必ずしもかわいそうな境遇に置かれるばかりではない。むしろ、幸せに過ごせることも多い。しかし一方で、若い女性の人身売買や臓器売買目的などの悲惨な人身売買も多い」

 いずれにしろ人身売買では、誘拐などで売買の対象となった人が悲惨な環境を強いられるケースも多いという現実を忘れてはならない。
(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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