上場延期の理由のひとつとして、実際の利用者数をめぐる疑問が指摘されている。無料アプリのサービス開始は2011年6月で、世界全体の登録者数が5億人を突破したのは今年8月10日。交流サイト最大手の米フェイスブックですら、5億人という大台に乗せるには開設から6年5カ月かかっており、LINEはわずか3年足らずでの猛スピードで大台に乗せた。
ところが、シンガポールのメディア「Tech in Asia」が今年初め、LINEが発表している利用者やダウンロードの数字に疑問があると報じたことから、疑惑が一気に広がった。登録者数とはアプリケーションをダウンロードしてユーザーとして登録した人の数であり、実際に利用していない人も多い。アプリビジネスで大切な指標はMAUと呼ばれる月間アクティブユーザーであり、月1回以上活動のある利用者の数を指す。
MAUを発表しているメッセンジャーアプリは、世界最大である米WhatsAppと中国WeChatである。現在、ウィーチャットとワッツアップはそれぞれ、4億人と5億人のMAUを獲得しており、ワッツアップはブラジル、インド、メキシコ、ロシアなど新興国で成長を続けており、全世界で利用者が10億人を突破している。ちなみに今年、フェイスブックが190億ドルで買収している。
一方LINEはこれまでMAUを公表してこなかったため、「LINEとウィーチャット、ワッツアップを正確に比較することができなかった。LINEはライバル社より業容を大きく見せるために公表しなかったのではないか」(IT業界関係者)という批判が広まっていた。上場会社にはMAUの公表が義務づけられており、避けて通れない。
そのためLINEは10月9日、MAUが1億7000万人であることを初めて公表した。登録者数5億6000万人の3割にとどまり、ライバルのウィーチャットやワッツアップを大きく下回る。実際の利用者のあまりの少なさは、業界に衝撃をもって迎えられ、「これでは上場延期もやむを得ない」(市場関係者)という声も聞こえる。
●対応遅れる不正乗っ取り問題
もう1つの上場延期の理由と指摘されているのは、今春以降から多発しているLINEのアカウント(ID番号)の不正乗っ取り問題が未解決なことだ。LINE利用者のアカウントを乗っ取り、本人になりすまし、「コンビニで電子マネーのプリペイドカードを買うのを手伝って」と呼びかけ、カード番号を送らせ、電子マネーを騙し取る手口だ。