LINEは乗っ取り防止策として7月、本人確認の方法であるメールアドレスとパスワードの登録に加えて、任意での暗証番号の設定を求めていた。だが、目立った効果は見られず、7月以降は、電子マネーに代わってアプリや音楽を購入できるプリペイドカード・アイチューンズカードでの被害が頻発した。アイチューンズカードも電子マネーと同様、カードの裏に記載されたコードを使ってネットで買い物ができる仕組みとなっている。
一連の事態を受けてLINEは9月、これまで任意だった4桁の暗証番号設定をすべての利用者に義務化した。その効果が表れるかどうかを見極めるには時間を要するが、セキュリティに懸念があるとして7月、中国はLINEのサービス提供を禁止。9月には台湾が政府機関でのLINEの使用を禁止した。最大の市場である中国でサービスを展開できないことが、利用者伸び悩みの一因となった。
●上場後の高値への期待に冷水
これに追い打ちをかけるかのように、米連邦準備理事会(FRB)が7月にイエレン議長の米議会証言に合わせて提出したリポートで、「業務の実態以上に株価が高騰している」という懸念から、交流サイト企業の株価の割高感を指摘。上場後の高値への期待が消えたことも、上場延期の背景にあるとされる。
LINEの14年7~9月期の売り上げは230億円(前年同期比82.9%増)。このうち通話アプリのLINE事業は、倍増となる209億円だった。メッセージのやりとりは無料なので、日本でのゲーム課金やスタンプによる収入が大部分を占めているとみられている。
前出のWhatsAppとWeChatに加え、楽天が9億ドルで買収したViber(キプロス)、カカオ(韓国)など、メッセンジャーアプリ市場は競合がひしめいている。そんな中、LINEは15年までに利用者数10億人を目指すとしているが、海外市場で収益を得るために、どのようなビジネスモデルを構築するのか。市場関係者は厳しい目で注視している。
(文=編集部)