化粧品のOEM(他社ブランドの商品製造)を手がけるコスメティック・バーリィという会社が、ハラル認証を受けた化粧品の製造販売業者として本格的に輸出を開始した。
ハラル認証とは、イスラムが認定する適正な方法で処理・加工などが施された食品であることを表すものだ。厳しい戒律で知られるイスラム教徒たちは、イスラム教の教えにのっとってつくられた食品を手にすることを望む。これまで、食品に関するハラル認証は比較的知られていたが、「体につける」ということで、実は化粧品やトイレタリーもその対象となる。
そして、化粧品の分野でハラル商品製造の実績があるのが、日本ではコスメティック・バーリィである。同社は自社ブランドの化粧品を製造するのではなく、ブランドを有する化粧品会社からの委託で製造を行うOEMメーカーだ。一昨年から、日本居住のイスラム教徒向けに、ハラル認証を受けた化粧品のOEMを行ってきた。
同社の伊豆味きみ子社長は、「昨年末、当社の顧客である化粧品会社がついにイスラム圏への輸出を始めました。これを機に当社も、化粧品会社と協力して輸出を本格化していきたいと考えています。ハラル認証を受けた日本の高品質な化粧品を、世界中のマーケットに普及させたいのです」と意気込みを語っている。
巨大なイスラム市場
ハラル市場の規模は、驚くほど大きい。イスラム教徒は世界に16億人以上いるといわれており、2014年7月15日付日経産業新聞記事によると、15年のハラル市場は1兆ドル(約120兆円)以上と報じられている。
この巨大市場に、国家戦略として対応しようとしているのがマレーシアだ。マレーシアの人口は約3000万人で、そのうち60%以上がイスラム教徒である。マレーシア政府は、1970年代からハラルに対応する基準や認証規定を設け、イスラム諸国のデファクトスタンダードとして機能してきた。
その結果、マレーシアのハラル商品の輸出は、13年に100億ドル(約1兆2000億円)に達したと、14年4月25日付日経産業新聞記事は伝えている。コスメティック・バーリィの商品が認証を受けている日本のハラル認証機関も、マレーシアの規定に準拠している。
「ハラル認証の化粧品製造の実績は、シャンプーやトリートメントなどのヘアケア製品、ソープ類が多いです。ここに来て、国内の一流ホテル向けのアメニティ仕様の引き合いが増えています」(伊豆味社長)
これは、海外から訪れるイスラム教徒の観光客が急増しているからだ。しかし、当然ながら日本国内でのハラル市場は限定されたものである。
「輸出用としては、シャンプーや化粧品の分野で大きな可能性があります」(伊豆味社長)
また、伊豆味社長は生産体制についてもこう語っている。
「ハラル認証を受けるには、製造と包装の機材を一般製品の生産ラインと切り離して、独自のものを導入しなければなりません。当社の工場では、すでにそれを実施しており、本格的な生産体制が整っています」
ハラル化粧品の可能性について、筆者はコスメティック・バーリィの取り組みが試金石になると考えている。ハラルビジネスの鍵は、当然ながら海外輸出だ。アジアや中近東の大イスラム市場を見据えて、日本の高品質なハラル商品が飛び立っていくことになる。その動きがうまくいけば、15年はハラルビジネス元年となるだろう。
(文=山田修/経営コンサルタント、MBA経営代表取締役)