機能性表示食品、健康被害多発の危険 事前審査なく事業者まかせ、嘘つき商品氾濫の恐れ
4月1日から、食品の機能性表示制度がスタートした。山口俊一内閣府特命担当大臣は4月7日の記者会見で、機能性表示食品の届出について「4月6日15時時点で八十数件」と明らかにした。
いわゆる「一番乗り効果」を狙った企業が80社ほどあることになる。実際は1社で複数の商品を届け出ているケースもあると思われるため、80社以下かもしれないが、山口大臣も「期待が高い」と語るように、食品業界では機能性表示食品のミニフィーバーが起きているといえる。
4月16日時点での届出は、加工食品42件、サプリメント62件だ。形式審査後に受理され、内容が消費者庁のホームページに公開されたものは加工食品2件、サプリメント6件となった。今後も次々に受理され、公開されるだろう。
新制度に一番乗りすることで、宣伝効果は絶大だろう。しかし、例えば「一度に50商品が機能性表示食品になった」となると、マスコミも全商品を同時に取り上げるわけにはいかない。消費者も、店頭に機能性表示食品が多く並べば、どれを選べばいいのかわからなくなる。特定保健用食品(トクホ)のように、商品の数が限られているほうが選びやすいだろう。
事業者としては「黙って見過ごすことはできない」「他社に取られてなるものか」という心理が働き、届出ラッシュになった機能性表示食品。しかし、実は消費者はおろか、事業者にとっても、リスキーな商品になる可能性がある。
「事前審査なし」の危うさ
トクホと違い、機能性表示食品には事前審査がなく、届出だけで効果を表示できる。そのため、事業者としては開発費用を抑え、開発から販売までの期間を短縮することができる。早く、安く、商品開発を行うことができるわけだ。
しかし、消費者庁は「事後監視は行う」と表明している。仮に事後のチェックで落ちてしまえば、企業イメージは著しく損なわれるだろう。「事前に審査をしてくれたほうがよかった」と嘆いても、後の祭りである。届出制の機能性表示制度は「事業者性善説」に基づいた制度であり、不正などは事業者を信頼していた消費者だけでなく、国にとっても許せない行為となる。
また、消費者庁は、届出のあった機能性表示食品の「形式的な審査は事前に行う」としている。書類上の不備や「NGワード」などをチェックするということだが、何が不備に当たるのか、NGワードにはどんなものがあるのか、はっきりとしていない。
安全性や効果の科学的根拠、表示可能な言葉などについて、事前に細かくチェックされるのであれば、事業者側も安心だろう。しかし、販売後に消費者や専門家から問題を指摘され、「消費者庁は、そこまでチェックしていない」となると、事業者のリスクは大きくなる。
加えて事後監視も、いつ、どの程度行われるのか不明だ。事業者にとって最もリスキーなのは、安全性の確保と効果の科学的根拠をどのくらい厳しくチェックするかの判断基準が示されていないことである。