無理をする、見栄を張る、我慢する、頑張りすぎてしまう…。
社会生活を送る上で、人がストレスを抱えてしまう原因はたくさんある。時期的にも五月病の季節。気持ちが日常生活、仕事モードに戻り切らないという人も多いだろう。人間はどうしてこんなにも疲れてしまう生き物なのだろうか。
本書『考えすぎる脳、楽をしたい遺伝子』(長沼毅/著、クロスメディア・パブリッシング/刊)では、「脳に振り回されずに生きる方法」を生物学的な視点から考え、解説する。著者の長沼氏は生物学者で、今春からは、日本テレビ『スッキリ!』にてコメンテーターを務めている。
長沼氏は、深海や火山といった極限状況に生きている生物を中心に、地球に生きている様々な生き物を調査してきた。しかし、自分から好き好んで自分を辛い状況に追い込む生物は、人間だけだという。スタンフォード大学のある教授によると、脳という臓器がもっともいいコンディションだったときは、今から6000年前、文明ができた頃だったとされている。逆に言えば、文明の発達とともに人間の脳は、実は劣化しているというのだ。
そして、脳を自然に対して使うのをやめた結果、その能力を人間関係に対して使うようになった。人間の脳は抽象的なことを考えられるのが特徴だ。「メタ認識」と言って、色んなことを脳内宇宙で組み合わせて、今までなかったことを作り上げられる。この能力が建設的な方向に広がる分にはいいが、そうではなく、「悩み」や「不安」といった負のものが、脳の中でグルグルと堂々めぐりしてしまうような状態になると、一転して人を苦しめるようになる。人間は脳内にこのようなバグを持っているというのだ。
人間の脳は進化の過程で、様々な遺伝子が誤用され、転用され、流用される中で偶然生まれたものなので、不都合がたくさんある。「元々、体の作りからしておかしいのだから、少しでも楽しませんか」と長沼氏は提案する。
家族、友人、会社、日常生活を送るのに、集団生活は欠かせない。ただし、人が集まると困り事が起こるものだ。特に会社では数十人の人と関わるので、ストレスを受けることも多々ある。では、なぜ人間はわざわざ「会社」を作ったのか。それは、端的に言えば「ストレスを補って余りある利益かあるから」だ。人間以外の動物も、群れで生活しているとストレスを感じる。群れるのが好きで群れているわけではなく、彼らもまた、群れることで享受できるメリットが大きいから集団で行動しているだけに過ぎない。
なので、気が合わない人がいても、仕事がつまらなくても、身体や心を壊してしまうような危機を感じなければ、ちゃんとお給料をもらっている限りは、その会社にいればいい。割り切るしかない。
逆に、身体的あるいは精神的にきついならさっさと辞めてしまう。それが生物として自然な振る舞いだ。自分の身体と心を守れるのは自分しかいない。会社なんて、人が集まっているだけの「場」に過ぎない。体に合わなければよりいい場に移ればいいというのが、生物学者である長沼氏の考えだ。
人間関係に悩んだり、頑張りすぎて疲れてしまう。そういったストレスを少しでも軽減し、楽に生きるための方法を本書から得られるはずだ。
(新刊JP編集部)
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※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。