NEW
カール教授の超入門ビジネス講座

アマゾン、強さの秘密は「本業の低収益率」?新規事業構築の定石、自社の強みを外部販売

【この記事のキーワード】

, ,

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

通販サイト「amazon.co.jp」より
 米国アマゾン・ドット・コムの株価が急騰している。同社は4月23日の決算発表で、クラウド事業「アマゾン・ウェブ・サービシズ(AWS)」の業績を初めて開示したからだ。同事業の過去12カ月の売上高は51億6000万ドル、前四半期の増収率は前年同期比49%、利益6億8000万ドル、営業利益率13%となり、同社全体の売上高に占める割合は7%にすぎないが、利益は全体の37%を占める(4月28日付米ウォールストリートジャーナル記事より)ほど好調だった。一方で本業のオンラインショッピング事業は収支トントンの水準だ。ここに、多くの企業にとって新規事業を見つけだす大いなるヒントがある。

 アマゾンは1995年にジェフ・ベゾス氏が書籍のオンラインショップとして設立した。その後、書籍以外にも商品を拡大しつつ、中古本の販売も開始した。当初、世間は膨大な在庫リスクや在庫コストが発生すると冷たい評価をしていたが、ベゾス氏はプラットフォーム戦略【註1】を採った。

 プラットフォーム戦略とは、関係する企業やグループを「場=プラットフォーム」に乗せることで、新しい事業のエコシステム(生態系)を構築する経営戦略であり、アマゾンのほかグーグル、マイクロソフト、フェイスブックなど21世紀を牽引する米国企業に共通にみられる戦略だ。

『カール教授のビジネス集中講義「ビジネスモデル」』(平野敦士カール/朝日新聞出版)
 日本における代表例は、インターネット・ショッピングモールの「楽天市場」だ。楽天自体がモノを売っているわけではなく、楽天市場という場にモノを売りたい小売店をたくさん集め、商品の魅力で外部ネットワーク効果やクチコミを誘発し、その集客力を武器にさらに出店数を増やす。そして集客した会員を粗利益の高い自社ビジネス、例えば楽天カードにつなげるような経営戦略といえばわかりやすいかもしれない。

 アマゾンも中古本を売りたい人と買いたい人を仲介する「場」(マーケットプレイス)をつくり、手数料で稼ぐモデルを構築した。これならば在庫は出品者にあり、アマゾン自体には在庫コストも在庫リスクも発生しない。さらに新刊と並べて中古本を表示することや読者のレビューを記載すること、アマゾンアソシエイトと呼ばれる読者による書籍紹介の奨励によって、圧倒的なプラットフォームを構築することに成功した。

プラットフォーム構築の定石


 これは筆者がL字型展開と呼ぶプラットフォーム構築の定石どおりといえる。つまり、まずは自社の製品・サービス等によって顧客との関係を構築したのちに、当該顧客に対して他社の製品・サービス等を販売することでプラットフォーム化を図る方法だ。

 今回株価急騰となったAWS事業は、2006年に自社のオンラインコマース事業の一部を他社に提供するかたちで開始されたものだ。すなわち、自社のオンライン上でのノウハウを生かして自社システムの有効活用を図るとともに、第三者へ低価格で高品質のサービスを提供するものだ。具体的にはオンラインクラウドサービスとして、サーバーの提供、ストレージ、データベース、分析ツール、アプリケーションなど実に700以上のサービスを従量課金(顧客は使った分だけの料金を払う)などで極めて低価格で提供しているものだ。最も有名なのは、クラウド内で規模の変更が可能なサービスを提供するAmazon EC2だろう。