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食べてる人を見たことない?マック激推しのサムライマックの謎と人気の秘密

文=Business Journal編集部、協力=重盛高雄/フードアナリスト
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マクドナルド「炙り醤油風 ベーコントマト肉厚ビーフ」(撮影=重盛高雄)

マクドナルドの「サムライマック」こと「炙り醤油風 ダブル肉厚ビーフ」と「炙り醤油風 ベーコントマト肉厚ビーフ」。単品価格500円超えというファストフードチェーンのハンバーガーとしては高価格帯の位置づけながらも、2商品の販売数がレギュラーメニュー入りから約3年間で累計2億食を突破(昨年3月時点)するなど、ヒット商品に成長している。公式サイトのメニューページでも常に期間限定メニューのすぐ下に掲載されイチオシ商品となっていることがうかがえるが、マクドナルドを頻繁に店内利用する人たちからは「店内で食べている人を見たことがない」「一緒に行く知人も誰も注文していない」「誰が買っているのだろう」といった疑問の声も聞かれる。そのクオリティや価格妥当性をどう評価すべきか。また、どのような層が購入しているのか。専門家の見解を交えて追ってみたい。

 マクドナルドは全国に約3000店を展開。モスバーガー(約1300店)、ロッテリア(約300店)、バーガーキング(約200店)を大きく引き離し、店舗数ベースでは圧倒的なハンバーガーチェーン業界1位であり、国内外食チェーンとしても1位だ。

 バーガー類のメニュー構成としては主に4つにカテゴライズされる。まず、「ハンバーガー」(170円/税込/店舗によって異なる)、「マックチキン」(180円)、「エグチ(エッグチーズバーガー)」(240円)といった「ちょいマック」シリーズをはじめとする手頃な価格帯の商品。次に「てりやきマックバーガー」(400円)、「ビッグマック」(480円)、「えびフィレオ」(430円)、「フィレオフィッシュ」(400円)などの中価格帯商品。そして、500円を超えるレギュラーメニューの「サムライマック」、やや割高な価格設定の期間限定商品だ。

「サムライマック」はもともとは2020年4月に期間限定メニューとして販売され、21年4月にレギュラーメニュー化。前述のとおり販売数量的には人気メニューといって間違いなく、不定期で期間限定販売されるパティ3枚重ねの『炙り醤油風 トリプル肉厚ビーフ』も人気で、昨年6月に販売された際には1秒間に2.6個販売されたという(24年8月16日付「ORICON NEWS」記事より)。

「炙り醤油風 ダブル肉厚ビーフ」(580円)は、つなぎ不使用の厚みのある100%ビーフのパティを2枚使用し、チェダーチーズ2枚、スライスオニオンを炙り醤油風ソースで味付け。トーストした、けしの実を使用したバンズで挟んだ一品だ。「炙り醤油風 ベーコントマト肉厚ビーフ」(570円)は、同様のパティ、トマト、スモークベーコン、レタス、スライスオニオン、ホワイトチェダーチーズを使用している。

 ちなみに他チェーンの高級バーガーとしては、モスバーガーの数量限定商品「一頭買い 黒毛和牛バーガー ~山わさび醤油仕立て~」(890円)が有名だが、価格的には「サムライマック」のほうが安い。また、「サムライマック」は同じくマクドナルドで現在販売中の期間限定メニュー「ザク切りポテト&肉厚ビーフ コク旨ガーリックマヨ」(540円)より高く、昨年11~12月に販売されていた毎年冬の風物詩で超人気メニューの「グラコロ」(440円)、「濃厚デミ&タルタルグラコロ」(490円)よりも高く、マクドナルドとしては最上位価格帯の商品となっている。

購入する層が20~30代の男性に集中

 そんなサムライマックだが、前述のように「誰が買っているのか?」という疑問も多いようだが、外食チェーン関係者はいう。

「売れている商品であることは間違いないでしょうが、サムライマックは購入する層が20~30代の男性に集中しており、また会社帰りに夕食用にとしてテイクアウトで購入したり、休日に同じくテイクアウトで購入するというパターンが多いとみられ、店内で食べるお客というのはあまり見かけられないのかもしれません。店内利用が多い10~20代の客は、バーガー類を注文せずにドリンクを飲みながらマックフライポテトやチキンマックナゲット、スイーツ系メニューを数人でシェアするという行動をとるケースも多く、余計にサムライマックは選ばれにくいのかもしれません。

 味に関しても、非常に肉々しくて味も濃く、高さの厚みがあるため大きく口を開けて食べなければならなかったりもするので、非常に“お客を選ぶ”商品でもあります。万人受けする商品というよりも、がっつり肉を食べたい若い男性や、たまの自分へのご褒美として買う男性向けといえるでしょう」

高級感を感じさせる要素が少ない

 では、そのクオリティや価格妥当性をどう評価すべきか。フードアナリストの重盛高雄氏はいう。

「まず『炙り醤油風 ベーコントマト肉厚ビーフ』は一言でいうと物足りなさを感じます。確かに肉は厚めですが、メニュー写真と比較して野菜の量が少なく存在感が薄いため、ソースの強い濃さを中和してくれることもなく、シャキシャキ感で食感を豊かにしてくれることもありません。客が購入する際に抱く『こんな感じなのではないか』という期待が悪い意味で裏切られるという印象です。また、『炙り醤油風 ダブル肉厚ビーフ』はとにかく食べている間の肉とチーズの油感が強すぎて、野菜が口の中をリフレッシュしてくれるということもありません。

 同じく高価格帯のバーガーとしては昨年10月にコメダ珈琲店が期間限定で発売した『コメ牛』(並:840~930円)が話題となりましたが、見た目とは裏腹に味付けがほどよく、ふんわりしたバンズに適度にタレがしみ込んで、さっぱりとしていて、ワンランク上の価格設定でも納得できる仕上がりになっていました。それと比較すると、サムライマックは高級感を感じさせる要素が少ないと感じます。

 また、同じマクドナルドのグラコロはサクサクのコロッケを潰さない柔らかなバンズで、単にバンズがコロッケを挟んでいるという感じではなく、口に入れるとコロッケとバンズのハーモニーと優しい味、一体となった食感が広がり、期待を裏切らない味となっていました。同程度のお金を払うのであればサムライマックよりグラコロのほうが納得感が高いのではないでしょうか」

利益的なメリット

 サムライマックをマクドナルドが販売している狙いについて、重盛氏はいう。

「強力な季節限定メニューがあると来店数の増加につながりますが、それに加えて安定して売れる主力の高価格商品をレギュラーメニューに持っていると、利益的なメリットが大きいということで、その柱に育ってくれることを期待している面もあるのではないでしょうか」

(文=Business Journal編集部、協力=重盛高雄/フードアナリスト)

重盛高雄/フードアナリスト

重盛高雄/フードアナリスト

ファストフード、外食産業に詳しいフードアナリストとしてニュース番組、雑誌等に出演多数。2017年はThe Economist誌(英国)に日本のファストフードに詳しいフードアナリストとしてインタビューを受ける。他にもBSスカパー「モノクラーベ」にて王将対決、牛丼チェーン対決にご意見番として出演。最近はファストフードを中心にwebニュース媒体において経営・ビジネスの観点からコラムの執筆を行っている。
フードアナリスト・プロモーション株式会社 重盛高雄プロフィール

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