今月、マクドナルド店舗でデリバリー配達員とみられる男性が店員に激怒し、店員が冷静に「帰っていい」と告げ無視し、その後も男性が店員に悪態をつき続ける動画がSNS上で拡散。トラブルの原因は、客に商品の出来上がりを知らせるレジカウンター上部のモニターから番号が消えたことだとみられるが、SNS上では「番号がすぐ消える」「受け取りもしていないオーダーナンバーが消える」といった報告が多数みられる。商品受け取り前に番号が消えることはあるのか。また、注文から商品提供までの所要時間を本部が計測しており、その時間が長くなると店舗の評価を落とされるため、一定の時間が経過すると消すようにしている店舗もあるのではないかという意見もみられるが、そのような事実はあるのか。マクドナルドの見解も交えて追ってみたい。
今月に動画が拡散されたマクドナルド店舗での男性と店員の間でのトラブル。デリバリーサービスで注文された商品は、出来上がるとレジカウンター上部のモニターに番号が表示される運用になっているが、動画内では店員が男性に対し「25分たったら廃棄になるから。番号お呼びしました。番号確認しましたよね?」と説明すると、男性は「『まだや』っていうから待ってんねん」と怒り、目の前に置かれていた商品をカウンターに叩きつけ。店員から「帰っていい」と言われると「『帰ってええ』ちゃうわ、おい、こら待てやお前、おい!」とさらに激高したという内容だ。
現在、マクドナルドの多くの店舗では、客がアプリ「モバイルオーダー」や店舗に設置されたタッチパネル式注文受付機で注文内容を入力し、商品が出来上がるとモニターに注文番号が表示されるという運用になっている。具体的には、たとえば「モバイルオーダー」から注文する場合、スマホにダウンロードした公式アプリで店舗と商品を選択後、持ち帰りか店内飲食かを選択。この際、持ち帰りの場合は店内カウンター受け取り、駐車場受け取り、ドライブスルーのいずれか、店内飲食の場合はテーブルに商品を届けてもらうかカウンター受け取りかのいずれかを選ぶ。店舗に到着したら「受け取りに進む」ボタンを押して、カウンター受け取りの場合は、画面に表示された注文番号が店内のモニターに表示されたら、カウンターに進んで商品を受け取るという流れだ。支払い手段としてはPayPay、d払い、楽天ペイなど各種QR決済サービスに加えクレジットカードなどが可能であり、現金支払いは対応していない。
注意点としては、店舗到着時に「受け取りに進む」ボタンを押すという流れになっている点だ。モニターの「お呼出中の番号」に番号が表示された時点で注文者がカウンター前にいないと、注文がキャンセルされる場合がある旨がユーザには通知される。この「お呼出中の番号」の表示をめぐって、SNS上では以下のような声が多数あがっているのだ。
<番号がすぐ消える謎の挙動>
<突然注文番号が消える&店員の声が小さくて何番呼んでるかわからない>
<出てくる数分前に番号が消える>
<呼び出されないまま呼出し番号が消える>
店舗オペレーションとしての必要性
番号が消えることがあるというのは事実なのか。また、消えるのであれば、その理由は何なのか。Business Journalの取材に対し日本マクドナルドは次の回答を寄せた。
「モニターに表示できる数には限りがございますため、一部店舗において想定以上の多くのお客様にご利用いただく時間帯に、表示できる数量以上のご注文が入った場合は、口頭でのお客様のお呼び出しに変更させていただいております。また、一定時間を経過しますと、自動的にモニターの番号は消えますが、必ず口頭でお声がけしております」
外食チェーン関係者はいう。
「1度にモニター上に表示できる番号の数には限りがあるので、ある程度時間が経過したら番号を消すというのは仕方がない。店舗に行く前に離れた場所からモバイルオーダーで注文する客のなかには、かなり遅れて店舗に来たり、何らかの事情で注文したものの受け取りに来ない客もいるだろうから、そうした客の番号をずっと表示させておくわけにはいかない。出来上がった商品を常温下に長時間置いたままにしておけば食中毒のリスクもあるため、店舗オペレーションとしてはキャンセル処理する必要がある。
また、マクドナルドではピーク時にものすごい数の客が押し寄せる店舗もあり、その時間帯にモバイルオーダーでの注文も重なると、必然的にモニター上に番号が表示されてから消えるまでの時間が短くなってしまい、トラブルが生じる可能性が出てくる。たとえば一画面上にすべての数字が表示されなくなったら、表示画面を数秒間隔で2ページ目、3ページ目に遷移させて、できるだけすべての番号を表示させるような工夫などをすれば、少しはトラブル抑制につながるかもしれない」
「ご提供するまでの時間は、お客様のご期待に添えているかの指標としております」
モニター表示をめぐっては、ある憶測も話題となっている。客から注文を受けてから商品提供までの所要時間を本部が計測しており、その時間が長くなると店舗の評価を落とされるため、一部の店舗はモニターの「お呼出中の番号」に番号が表示されても客がレジ前にいない場合、早い段階で注文をキャンセル扱いにして番号を消しているのではないかという見方だ。これについて日本マクドナルドはこう説明する。
「マクドナルドでは、クィックサービスレストランとして、全てのお客様に出来立ての商品を、お待たせすることなくご提供したいと考えています。そのため、店舗の形態やお客様の注文形式に応じて、オーダーを受けてから商品提供までのスピードに一定の目標値を定め、最適なタイミングで商品をご提供できるように最善を尽くしております。スピードに課題がある場合は、必要に応じて人員や機器設備の強化を行っております。ご提供するまでの時間は、お客様のご期待に添えているかの指標としております。それだけによって店舗の評価に影響するものではなく、総合的な指標の一つです」
また、1月19日付「ねとらぼ」記事の取材に対し同社は「一部の店舗における誤った対応につきましては把握しており」と認めているが、外食チェーン関係者はいう。
「どこの大手外食チェーンも、オペレーション改善のために注文から商品提供までの時間を計測している。マクドナルドの店舗の大半はフランチャイズ会社による運営だが、マクドナルドとしても『番号がすぐ消える』という悪い評判が立って売上が落ちると困るので、杓子定規的に商品の提供時間が遅いからという理由で評価を下げてペナルティーを科すといったことはやらないだろう。一部店舗で誤った対応が生じていたのだとすれば、評価が下げられるからというより、単にピーク時などには早く番号を消さないとオペレーションに遅れが生じるからという理由ではないか」
(文=Business Journal編集部)