先月、X(旧Twitter)上の「【ウーバーイーツ社長へ】高松は大半の配達員が配達拒否をして注文システム崩壊寸前です」「ものすごい数の破棄される商品。フードロス問題はどうお考えでしょうか?」というポストが話題を呼んでいた。他のエリアでも同様にUber Eats(ウーバーイーツ)配達員の報酬が著しく下げられたことで配達員が確保できず、当初の到着予定時間から1~2時間も遅れたり、注文者が長時間待たされた挙句にキャンセル処理をされたという報告が相次いでいる。現役の配達員は「ウーバーイーツではしばしば、一部のエリアに限定して報酬を著しく下げるということをやっている。実験的に『どこまで下げても配達員を確保できるのか』を探っているのではないないかといわれている。下げ過ぎて配達員を確保しにくくなると配達料に調整が入って、少し上がる。それがまた起きているのではないか」と指摘する。
フードデリバリーサービスが大きく普及するエンジン役となったウーバーイーツが国内でサービスを開始したのは2016年。その翌年には出前館もサービスを開始し、現在ではWolt(ウォルト)、menu(メニュー)など競合サービスも存在感を示しつつある。Web行動ログ分析ツール「Dockpit」を手掛けるマーケティング調査企業・ヴァリューズが運営するサイト「マナミナ」記事(2024年7月3日付)によると、23年6月~24年5月の1年間のウーバーイーツのアプリユーザー数は約1550万人。出前館はそれを上回る約1660万人、menuは約524万人、Woltは約375万人。いまや社会インフラの一つになったといえる。
そんなウーバーイーツをめぐって、先月あたりからSNS上では以下のような報告が相次いでいる。
<配達員です。ウーバーイーツで配達員が決まらない、マッチングしない、商品が1時間以上届かない、などのクレームが相次いでます。原因は、年末から突然Uber Eats側が一方的に配達員に払う単価を著しく引き下げ、それに納得しない配達員が溢れている、という理由です>
<キロ単価100円を下回る様な案件ばかり>
<19時→19時半→20時と到着が延びた挙句、勝手にキャンセルされた>
<料理完成から1時間待ち+複数配達で注文から2時間後に届いた>
<20分~30分でお届けだったのに結局2時間待って冷めた割高バーガーが届いた>
<Uber頼んだら、お店は商品出来上がってるのに、配達員を探し中で1時間以上経って自動的にキャンセルされた>
<Uber調理している側です。心を込めて作っても、配達員さんいないため、昨日も2時間待たされた挙句に自動キャンセルされました>
<ファミレスで働いてるけどほんとに最近これ。毎日配達員不足で廃棄ばっかり>
配達員の報酬の詳しい算出方法は非公開
こうした事象が生じる原因はウーバーイーツのシステムにある。利用者がウーバーイーツ上から注文すると、配達員が確保されていない段階で店舗に注文が入り、店舗は調理を行う。店舗から一定距離内にいる稼働中の配達員のアプリに通知が入り、表示された距離や配達料をみて配達員は引き受けるかどうかを判断するが、金額が低ければ配達員がいつまでも決まらず、一定時間が経過すると注文はキャンセル処理される。また、配達員はいったんは引き受けた配達をキャンセルすることも可能なので、その時間帯にウーバーイーツや他のデリバリーサービスでより報酬額の高い案件を獲得しやすいという情報が入れば、安い案件をキャンセルすることもある。
配達員の報酬の詳しい算出方法は非公開だ。公式サイトによれば、報酬は「基本金額」と「配達調整金額」で構成される。基本金額は「配達に費やす予定の時間、および商品の受け取り場所や届け先が複数あるかどうか」を基に算出され、注文数や稼働中の配達パートナーの人数によっても、この金額は変動する。配達調整金額は「通常の目安よりも交通状況が混雑している場合」「通常の目安よりも商品受け取り場所での待ち時間が長い場合」などに加算される場合がある。このほか、注文者からチップを獲得すると、その分が加算される。
日給は1万2000~5000円くらい
では、現在、配達をめぐって前述のような現象は実際に起きているのか。ライターでウーバーイーツ配達員の渡辺雅史氏はいう。
「配達員のカテゴリーには自転車、バイク、軽貨物自動車の3つがありますが、特定のエリアで特定のカテゴリーだけ配達料が急に下がったり上がったりするということは、過去にもみられました。ウーバーイーツ側がエリアを限定して実験的に“どこまで配達料を下げても配達員を確保できるのか”をテストして、その結果を全国に適用するというかたちで、ギリギリのラインを探っているのではないかといわれています。実際に過去には大阪で大きく配達料が下がり、その水準が1~2年後に東京にも波及したということもありました。
数年単位のスパンでみると配達料は減少傾向にあり、2年前は一日12時間の稼働で2万2000円くらいは稼げましたが、現在は東京だと1万2000~5000円くらいです。理由はいくつか考えられ、数年前に導入されたサブスクリプションサービス『Uber One』による実質的な価格低下が影響している面もあるでしょう」
注文から配達までの時間が長時間化している原因は何なのか。
「はっきりとした原因は分かりませんが、配達員は複数のデリバリーサービスを常に比較しながら同時並行で使って働くのが一般的なので、他サービスと比較してウーバーの配達料が低いと選ばれにくくなります。また、スキマバイトのタイミーの普及も大きいと思います。例えばマクドナルドはデリバリーでウーバーイーツも自前のマックデリバリーも使っていますが、タイミーだと1時間後くらいからマックデリバリーの仕事に入れて時給1300円くらいのこともあります。タイミーは時給換算なので配達が入っても入らなくても1300円を得られますが、ウーバーイーツは配達しないと報酬は発生せず、また時給換算で1300円いくことはほとんどありません。さらにタイミーが優れているのは、たとえば深夜1時に業務が終了しても、その時間に口座に報酬が振り込まれる点です」(渡辺氏)
気になる変化
このほか、ウーバーイーツをめぐっては最近、気になる変化が出始めているという。
「都心部のタワーマンションの上層階への配達というのが、以前とくらべてめっきり減ったというか、ほとんどなくなりました。そういう場所に住んでいる方は忙しい方が多いでしょうから、注文から配達まで長時間かかったり、いつ届くのかわからないということを受けて、利用するメリットを感じなくなっているのかもしれません」(渡辺氏)
(文=Business Journal編集部、協力=渡辺雅史/ライター)