人が亡くなれば、暮らしていた部屋を整理することになる。それは親の部屋かもしれないし、自分自身の部屋かもしれない。
遺品整理をしたり、されたりすることは、いつかは誰にでも起こることだ。とはいえ、何から手をつけていいのかわからないのが実際のところだろう。では、遺品整理をするときにはどうしたらいいのか。
『もしものときに迷わない遺品整理の話』(内藤久/著、SBクリエイティブ/刊)は、これまで1,500件近くの遺品整理現場にかかわってきた遺品整理のプロが、遺品で困らないために何をしておくべきか、遺品整理で迷ったときにどのように対処すべきかを解説する一冊だ。
遺品整理では、お金に関係する遺品が出てくる場合もある。例えば、故人本人も忘れていたのかもしれないような古い通帳だ。故人の通帳には、生前の生活の記録が残されている。亡くなったという連絡をして、何らかの手続きをしても、必ず漏れは生じるもの。しかし、一本化された通帳が遺されていると、比較的容易に見つけることができる。
公共料金はわかりやすい例だが、ほかによく見落としがちなのが、クレジットカードの年会費の引き落としだ。故人が何枚クレジットカードを持っていたのか、通帳の記録を見てはじめてわかることは、けっこう多いものだ。
そう考えると、生前から自分の通帳を整理しておくことも大事なことだ。「自分は、そんなに財産を持っていないから」と、多くの人は考えがちかもしれないが、遺される側からしたら、通帳があれば何らかの手続きをしなくてはならない。
多い、少ないではなく、自分の資産は、遺される人のためにわかりやすくまとめておくことが大切だと著者は指摘している。
もう一つ本書から。遺品整理で困惑するもののひとつが、美術品だという。美術品の遺品は価値がわからないので、遺族は困ってしまうのだそうだ。
「そんなすごいお宝が、うちにあるはずがない」とわかってはいるが、価値が分からないこと自体が不安になる遺族。だからこそ、美術品の処理については、生前に何らかの形で指示しておくことが大切であり、それが遺族のためになるという。
どこで、いくらで買ったものなのか。捨ててしまっていいものなのかどうか。あるいは価値はなくても大切にしておいてほしいものなのか。美術品に限らず、趣味の品物全般にいえることだが、遺品の価値をわかることにしておくことは重要だ。
いざというときに、何が必要なのか、今から準備できることはあるのか。その「いざ」は、いつかはわからないことでもあり、親かもしれないし、自分自身かもしれない。自分自身の資産や趣味の物などの価値をわかりやすくまとめておくなど、元気なうちから家族のためにできることはしておくべきなのだろう。
(新刊JP編集部)
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※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。