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垣田達哉「もうダマされない」(7月27日)

危険な塩分過剰摂取やトランス脂肪酸、なぜ野放し?事業者利益優先の政府の怠慢

文=垣田達哉/消費者問題研究所代表
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危険な塩分過剰摂取やトランス脂肪酸、なぜ野放し?事業者利益優先の政府の怠慢の画像1「Thinkstock」より

 先月、米国食品医薬品局(FDA)がトランス脂肪酸を含む油脂の使用を3年後に原則禁止すると発表したのには驚いた。しかしそれ以上に驚かされたのは、6月22日付日本経済新聞が報じた、「ニューヨーク市が飲食店にナトリウム含有量をメニューに表示するよう義務付ける方針を固めた」というニュースだ。

 トランス脂肪酸を禁止するといっても、食品安全委員会によると、正確には「FDAは、トランス脂肪酸が多く含まれる部分水素添加油脂は、GRAS(従来から使われており安全が確認されている物質)ではないとして、2018年から食品に使用するためにはFDAの承認が新たに必要と決定した」ということだそうだ。

 さらに食品安全委員会は「規制の対象は、トランス脂肪酸ではなく、部分水素添加油脂(マーガリンやショートニング等の原料)」であり「規制の内容は、使用禁止ではなく、3年後にGRASの対象から外されるということだけなので、承認申請して認められれば使用可能」だという。

 そうはいっても、安全が確認されていない物質を「はいどうぞ」と承認するはずはないだろう。トランス脂肪酸そのものを禁止しているわけではないが、トランス脂肪酸が含まれている物質を禁止すれば同じ結果になる。

 そもそも、米国がトランス脂肪酸を目の敵にするのも当然といえる理由がある。それは、米国人の死因のトップが心疾患だからだ。日本人の死因は1位ががんで2位が心疾患だが、米国は逆なのだ。高額医療費などの問題を抱える米国にとって、最大の健康対策は心疾患を抑えることなのだ。

 トランス脂肪酸の摂取を削減することで、実際に年間数千人を心臓発作から救うことができるのか疑問だが、事業者の利益より国民の健康を優先する大胆な政策を実施した米国政府には頭が下がる。日本では到底考えられないことだ。

塩分を過剰摂取する日本人

 そんな矢先、今度は塩分摂取削減対策を実行しようというのだ。

 日本人は、米国人と比べトランス脂肪酸の摂取量が少ない(エネルギー比で、米国は2.2%、日本0.3%)ので、「トランス脂肪酸の規制をしない」という食品安全委員会の方針は、妥当な結論なのだろう。

垣田達哉/消費者問題研究所代表、食品問題評論家

垣田達哉/消費者問題研究所代表、食品問題評論家

1953年岐阜市生まれ。77年慶應義塾大学商学部卒業。食品問題のプロフェッショナル。放射能汚染、中国食品、O157、鳥インフルエンザ問題などの食の安全や、食育、食品表示問題の第一人者として、テレビ、新聞、雑誌、講演などで活躍する。『ビートたけしのTVタックル』『世界一受けたい授業』『クローズアップ現代』など、テレビでもおなじみの食の安全の探求者。新刊『面白いほどよくわかる「食品表示」』(商業界)、『選ぶならこっち!』(WAVE出版)、『買ってはいけない4~7』(金曜日)など著書多数。

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