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南清貴「すぐにできる、正しい食、間違った食」

ノルウェー産養殖サーモンは危険!殺虫剤や毒性の強い薬品まみれで上限は年間3食?

文=南清貴/フードプロデューサー、一般社団法人日本オーガニックレストラン協会代表理事
ノルウェー産養殖サーモンは危険!殺虫剤や毒性の強い薬品まみれで上限は年間3食?の画像1「Thinkstock」より

 本連載前回記事『チリ産鮭は危険!殺虫剤や抗生物質を大量投与、有害物質含有の恐れ』でチリ産のが危険であると言及しましたが、「もうチリ産の鮭は食べないようにしよう。これからはノルウェー産の鮭にする」などと決心された方、ちょっと待ってください。ノルウェー産の鮭は、さらに危険度が高いという報告もあります。

 米コーネル大学、イリノイ大学やインディアナ大学などの研究で、鮭から検出されるダイオキシンや有機塩素系殺虫剤などによる汚染とその毒性レベルが測定され、リスク分析をした結果が栄養学の米専門誌「Journal of Nutrition」に論文として掲載されています。そこには「チリ産の養殖鮭は年6食程度を上限とすべき」という報告と同時に、「ノルウェー、スコットランド、カナダ東岸産の養殖鮭は年3食以下に抑えるべき」という報告もあるのです。つまり、ノルウェー産の鮭は、チリ産の鮭よりさらに危険度が大きいということです。

ノルウェー産養殖サーモンは危険!殺虫剤や毒性の強い薬品まみれで上限は年間3食?の画像2

 外食産業のなかには「秋の味覚」などと銘打ってノルウェー産の鮭をメニューの中心に据えているところもあります。別段、そのような店を誹謗する意図はまったくありませんが、情報は情報として取得した上で消費者が何を選択するのかは自由であるべきだと思います。

 そういう筆者も先日、友人である環境雑誌の編集長に連れられて東京・駒場の小さな飲み屋で、彼がオーダーした「鮭ハラス焼き」を一切れ食べました。おそらくノルウェー産だと思われます。食べながら、「環境雑誌の編集長といえども、汚染が広がる地球環境の影響が、今自分が食べている鮭ハラスにまで及んでいるということをご存じないのか」と思い、本連載を読むようおすすめしておきましたが、筆者は心のどこかで「そんなものかもしれないな」とも思ってしまいました。

「そんなものかも」と感じたのは、環境雑誌の編集長でさえ、自分自身の食生活に対しての認識が甘すぎる、いわんや一般の方々は彼よりも情報は少なく、選ぶに選べない状況なのだろうと拝察したためです。ちなみにこの編集長は現在、痛風で悩んでおります。そのため5種類の薬を毎日飲み続けているとのことです。この連載を読んで、自分の食生活を省み、変えていってくれることと信じております。

薬品漬けのノルウェー産鮭

 さて、ノルウェー産の鮭ですが、スーパーなどでは「アトランティックサーモン」という名称で売られています。チリ産と同様に、養殖場では病原菌や細菌がはびこる懸念があるため、さまざまな薬品が投与されています。

 そのうちの一つがエンドスルファンで、別名ベンゾエピンともいいます。エンドスルファンは、DDT(Dichloro Diphenyl Trichloroethane)、ジコホール、ヘプタクロル、クロルデン、マイレックス、ペンタクロロフェノールなどと同じ有機塩素化合物の一種で、非常に毒性が強いことで知られていますが、EUはエンドスルファンをノルウェー産養殖鮭のエサに使用することを2013年に認可しています。

 それだけでもノルウェー産の鮭を食べたいという意欲が失せようというものですが、加えて、昔は見かけることがなかったような鮮やかな色の鮭は、エサに混ぜ込まれた色素のせいなのです。鮭は本来、白身の魚です。日本で獲れる鮭は「シロザケ」といい、海に出て行く前までは、それほど身が赤くありません。海に出た後、回遊しながら小さなプランクトンや、エビやオキアミなどの甲殻類を捕食して成長していきます。それらの魚介類に含まれているアスタキサンチンという天然の色素を体内に取り込むことで身が赤くなっていくのです。

 アスタキサンチンはカロテノイドの一種で活性酸素を除去する、いわゆる抗酸化作用を持っており、疲労回復や老化防止に役立つ成分として注目されています。しかし、どんなに色鮮やかに見える鮭でも、化学合成された色素由来のサーモンピンクでは、健康効果を得られません。

 さらに問題を複雑化しているのは、鮭の養殖場の近くで起きている海洋汚染です。エサや、エサに混ぜられている抗生物質、抗菌剤など、病原菌やフナムシなどの繁殖を防ぐための薬品などが海を激しく汚し、深刻な事態を招いています。

化学薬品に汚染された地球

 アメリカの生物ジャーナリストであるレイチェル・ルイズ・カーソン氏は、1962年に著書『沈黙の春(原著:Silent Spring)』(訳:青樹簗一/新潮文庫)の中で、DDT、BHC(Benzene Hexachloride)をはじめとする有機塩素系殺虫剤と、パラチオンなどの有機りん系殺虫剤などの農薬、化学物質の持つ危険性を、自然界に生息する鳥の鳴き声が聞こえなくなるという寓話的な話になぞらえて警鐘を鳴らしています。その一説にこのような文章があります。

「人類の歴史が始まって以来、今まで誰も経験しなかった宿命を、私たちは背負わされている。今や、人間という人間は、母の胎内に宿ったときから年老いて死ぬまで、おそろしい化学薬品の呪縛のもとにある。だが考えてみれば、化学薬品が使われだしてから、まだ20年にもならない。それなのに合成殺虫剤は生物界、無生物界を問わず、いたるところに進出し、今では化学薬品に汚れていないもの、汚れていないところなど、ほとんどない。大きな川という川、そればかりか地底を流れる地下水もまた汚染している」(『沈黙の春』より)

 アメリカでの発行部数だけでも150万部を超え、全世界で読み継がれてきた同書ですが、その中でカーソン氏が訴えたことは、ほとんど生かされていないように思われます。それどころか、年を追って農薬や化学物質に汚された場所が拡大し、地球上のあらゆる場所から悲鳴が聞こえるような気がします。そして、この悲鳴が治まった後、沈黙が訪れるのでしょうか。人間は自らが招いた事態の中で、「座して死を待つ」という選択をするのでしょうか。そんなことはないと筆者は信じています。気づいた人から自分の食生活を見直し、少しでも良い方向に向かうように努力を惜しまないようにしましょう。

 人間の体の構造は、それほど多くの動物性たんぱく質を必要としていません。全食事量のうち10%程度の動物性たんぱく質を摂取すれば充分なのです。多くの方がそのことを実践すれば、今のように大量に鮭や魚を養殖しなくても済みます。もちろん食肉生産もしかりです。そしてそのことは、私たち自身の健康にもつながっていきます。一人でも多くの方に気づいていただきたいと切に願います。

 それにしても北海道育ちで鮭好きだった筆者の父や母が生きていたら、この事態をきっと嘆いたことでしょう。
(文=南清貴/フードプロデューサー、一般社団法人日本オーガニックレストラン協会代表理事)

南清貴

南清貴

フードプロデューサー、一般社団法人日本オーガニックレストラン協会
代表理事。舞台演出の勉強の一環として整体を学んだことをきっかけに、体と食の関係の重要さに気づき、栄養学を徹底的に学ぶ。1995年、渋谷区代々木上原にオーガニックレストランの草分け「キヨズキッチン」を開業。2005年より「ナチュラルエイジング」というキーワードを打ち立て、全国のレストラン、カフェ、デリカテッセンなどの業態開発、企業内社員食堂や、クリニック、ホテル、スパなどのフードメニュー開発、講演活動などに力を注ぐ。最新の栄養学を料理の中心に据え、自然食やマクロビオティックとは一線を画した新しいタイプの創作料理を考案・提供し、業界やマスコミからも注目を浴びる。親しみある人柄に、著名人やモデル、医師、経営者などのファンも多い。

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