自治会やPTAといった自治団体は、いずれもかつては政府の指導によって各地で結成されてきた経緯があり、半ば強制的に加入させられてきた。隣近所との付き合いが深かった頃には特に問題がなかったのかもしれないが、現代においては各家庭の事情は大きく異なるため、一様に負担を強制する自治は見直さざるを得ないのかもしれない。
平成17年4月26日最高裁判所第三小法廷において、「(自治会の会員は)一方的意思表示により退会することができる」との判決が下されたことで、自治会への加入の任意性が広く知られることとなった。そして、これを機に自治会への加入を拒否、または退会する人が全国で続出しているという。
ちなみに、東京・武蔵野市は、全国に先駆けて自治会制度を廃止したことが知られている。
第二次世界大戦中に政府が国民を統制するために隣組をつくったことが自治会制度の発端といわれている。隣組は戦争に非協力的な国民を憲兵に密告する役割を果たしていた。そのような背景から、連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)は隣組が戦争を推進させているとして廃止した。しかしGHQが去った後に再び日本政府は、自治会の制度を復活させた。これに対して武蔵野市は、軍国主義の反省から自治会を復活させなかった。
武蔵野市以外の全国の各地方自治体は、政府の勧告に従って自治会制度を推進し、それが今でも存続しているのだ。
トラブルが多発するPTA
自治会と同様、ほぼ強制的に加入させられることでトラブルが増えているのが、学校のPTAだ。子供が小学校に入学すると、最初の親への説明会・親睦会などの席でPTAの役員等の役割分担が行われる。その場で、PTA加入が任意であることや活動への協力が自由意志だなどと説明を受けることは皆無だ。役割がすべて決まるまで何時間も重い空気の中に“監禁”されることも珍しくない。
そのような慣習を打ち破る出来事が昨年起きた。熊本の小学校に通う児童の父親が、PTAの退会が認められなかったことが憲法21条に違反しているとして、約20万円の損害賠償を求める訴訟を小学校のPTAを被告として起こしたのだ。現在も訴訟は続いているが、原告の主張が大筋で認められるのではないかとの見方が有力だ。