訴状によると、2009年に2人の子どもが同市内の公立小学校に転入した際、PTAに同意書や契約書なしに強制加入させられ、会費を約1年半徴収された。その後、退会を幾度も申し入れ、話し合いの機会も設けたが平行線をたどったため提訴に至ったという。
憲法21条は、「結社の自由」を保障する条項だ。結社する自由と結社しない自由があり、PTAなどの任意団体は、その趣旨に賛同する人が自由に結成するものであり、望まない人に加入を強制してはならないというのが憲法上の大原則といえる。
現状では、PTAは加入が義務であるかのような制度となっている学校が多い。PTAの規約に「学校に通う児童の保護者を会員とする」と定め、強制的に会費を口座振替させている例も多いという。「6年間のうち、2回以上はなんらかの活動に従事すること」などと負担を強制する例もある。
その一方で、大抵は入会申込書などの書類も整備されていない。子供の入学に伴い当然に役員を押し付けたり会費を強制的に徴収することが、「結社しない自由」を侵し違憲であると主張する憲法学者もいる。
PTA会費が教職員の人件費や校舎の修繕費などに流用されている事案が次々に発覚し、批判も高まっている。
また、保護者がシングルマザーやシングルファザー、他人に知られたくない病気を抱えているなど、家庭ごとに複雑な事情を抱えているケースもある。仕事を持っている母親は、専業主婦と同じように学校の活動に協力できないだろう。それにもかかわらず、拘束時間の長い役割を引き受けなければならない制度は、もはや時代に合わなくなっている。
自治会やPTAなど、人とのつながりを重視し、協力し合って成り立ってきた制度は、日本人の美徳でもあり、今後も継続されていくことが望ましい。しかし、時代に合わせて柔軟なかかわり方ができるように形を変えていかなければ、かえって廃れることになってしまうだろう。
(文=平沼健/ジャーナリスト)