NEW
山崎元「耳の痛い話」

なぜ大手電機メーカーは「おかしく」なったのか?価格を叩かれる悪循環の脱出策

【この記事のキーワード】

, ,

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

東芝の事業所(「Wikipedia」より/Waka77)
 日本のエレクトロニクス・メーカーが冴えない。過去の経験則でいうなら、これだけ円安になれば、大手電機メーカーが揃って高水準の利益を叩き出していておかしくないのだが、海外のインフラ・ビジネスで好調の日立製作所や三菱電機といった好調組を除くと、東芝が「不適切会計」問題に喘ぎ、シャープは崖っぷちに立たされており、ソニーも業績が冴えない。また、かつての大手家電メーカーではすでに三洋電機がパナソニックに吸収されてしまっている。

 一方、トヨタ自動車をはじめとする自動車メーカーは、それなりに好調だ。少なくとも十数年前まで、株式市場では自動車と電機は並立して「国際優良銘柄」と呼ばれていた。

 この差は、どこから生じたのだろうか。

 原因は複数あるのだろう。製品として、自動車のほうが模倣しにくい製造上の複雑さを持っている。一方、電機メーカーの製品の多くが白物家電からパソコン、携帯電話に至るまで「コモディティ(誰でも大量生産できる商品)化」した。

 加えて、日本のエレクトロニクス・メーカーは、韓国よりは大きいが米国よりは狭い中規模サイズの市場のなかで、多数の会社があまりに似た製品をつくり、似た規模で競争していた。これは、韓国のサムスン、LGが自国の市場では大きなシェアを持って利潤を確保し、国際的な競争に打って出る体力を得ていることとよく対比される。

 上記の2点は、一般によく指摘されるところであり、個々には日本のエレクトロニクス・メーカーの経営的無策の結果でもある。

価格を叩かれる悪循環


 そして、無策がもうひとつあった。

 自動車も複数のメーカーが似た性能の車をつくっているが、自動車の場合、系列のディーラーを経由して売れることが多いので、個々の販売現場では、トヨタ、日産、ホンダの車が直接較べられて、値下げ競争に引き込まれるような事態になりにくい。

 これは、生保レディが顧客と結びついていて、自社の保険のみを売るようなマーケットに近い。生保は1990年代に運用の拙さからいくつかの中小生保が潰れたが、上位では長らく業界順位が逆転しない業界だった。

 一方、家電製品では、かつて松下電器(現パナソニック)がナショナル・ショップを通じて自社製品を売っていたような流通チャネルがあったが、徐々に家電量販店の購買交渉力が強まり、各社の製品が競合させられるのとともに、販売量を確保するために卸売り価格を叩かれる悪循環に陥った。