量販店に加えて、最近ではインターネット小売業者による販売が量販店を苦しめる勢いであり、最終的に価格競争となるような製品間の競争がますます激化している。
一方、近年ビジネスの成功例としてたびたび言及され讃えられることが多い米アップルの場合、自社製品用の流通チャネルであるアップルストアに力を入れ、独自の仕様とネットワークに顧客を囲い込む戦略も相俟って、iPhoneをはじめとする自社商品の価格設定により高水準の利益を確保できている。
もちろん、状況は刻々と変化している。
先ほど、流通チャネルが個別化して製品同士が競合しにくいビジネスの例として挙げた生保でも、近年は複数の保険会社の商品を扱う乗り合い代理店の勢力伸張や銀行経由の販売拡大などで、業界構造が変化しつつあり、かつて圧倒的な業界首位だった日本生命が、「離れた2位」だったはずの第一生命に昨秋、保険料収入で逆転されるような「驚愕の首位交替劇」が起こった。生保の首位争いの行方はまだはっきりしたとはいえないが、業界を知る者にとっては、かつてのキリンビールとアサヒビールのシェア逆転くらいの驚きだった。
価格競争を避ける方法
商品の供給者としては、「購買者が強い交渉力を持ち、複数の他社製品と価格競争をしなければならない状況」を避けなければいけないということだ。
ひとつには、商品やサービスで他社との「差」をつくり、同じ商品で競合しないようにすることだが、例えば清涼飲料製品市場で最大手であるコカ・コーラが、ヒットする可能性のある他社製品と似た製品を出し続けて「差」の発生を未然に防いでいるごとく、家電製品でも相互の模倣が容易で、特定のメーカーが差をつくりにくかった。
かつて、ソニーはデザインや製品イメージで一歩先をいき「同じ価格なら、他社製品よりはソニー製品がいい」として選ばれる地位を持っていた。しかし、今ではこの差はかつての有効性を持っていないように見える。
もうひとつの道は、優秀なカーディーラーや生保レディのように、個々の顧客とのつながりを持ってダイレクトマーケティングのチャネルを確立することだろう。しかし、エレクトロニクス製品のメーカーで、顧客の名前と属性、購買履歴などを大規模に収集しつつ、顧客を囲い込んで直接商品を売ることに成功しつつある企業は見当たらない。あえて名を挙げるとしても、iTunesを持っていてある程度顧客を囲い込んでいるアップルに可能性があるくらいだろうか。