12月2日、野村総合研究所が「日本の労働人口の49%が人工知能やロボット等で代替可能に」という研究結果を発表して話題を呼んだ。
同研究所では、英オックスフォード大学のマイケル・A・オズボーン准教授とカール・ベネディクト・フレイ博士との共同研究により、国内601種類の職業について、人工知能(AI)やロボットで代替される確率を試算した。その結果、10~20年後に日本の労働人口の約49%が就いている職業が、AIやロボットで代替される可能性があるという。
「人工知能やロボット等による代替可能性が高い100種の職業」には、「一般事務員」「受付係」「建設作業員」などが並び、逆に「代替可能性が低い100種の職業」には、「アートディレクター」「経営コンサルタント」「俳優」などが挙げられている。
12月25日付記事『AI=人工知能、甚大な社会的被害を生む危険…信じられない単純ミス連発も』では、当サイト連載「ビジネスのホント」および『ビジネスをつくる仕事』(講談社)著者の小林敬幸氏の解説により、AIの強みと弱みを考察したが、今回はAIによって「代替される仕事と、代替されない仕事」「我々の働き方はどう変わるか」について考えたい。
本当にAIの進化で仕事がなくなるのか?
小林氏は、「技術的にはAIで代替可能でも、経済的に割に合わなければ、人間に取って代わることはない。つまり、AIがやるより人間がやったほうがコストパフォーマンスが良ければ、代替されることはないだろう」と語る。
「例えば、AIやロボットで代替される仕事として『ビル清掃員』や『保管・管理係員』が挙げられるが、これはAIやロボットにとっては難度が高く、膨大な開発費も必要だ。一方で、現行の人間に払っているコストがそう高くないのであれば、すぐに代替されることはないだろう。
また、金融相場や小売の商品売り上げ予測などは、何十年も多額の資金をかけて、コンピュータと人間の知恵を総動員してシステムを開発してきた。その分野において、AIがすぐに圧倒的なコストパフォーマンスを出せるかどうかは、まだわからない。
それらを鑑みると、真っ先に代替されそうなのは、『開発において多額の追加費用が必要でなく、現行の人間には高い報酬を払っている仕事』となる。一番危ないのは、現時点で高報酬を得ることができる『言語と論理力を使う知的職業』だろう。
つまり、公認会計士、税理士、判例チェックをする法律事務所員、フォーマットに基づいて戦略立案を行う一部の経営コンサルタントや企業内の戦略企画部の仕事などが当てはまる。
また、言語処理の進化を活用するのであれば、政府発表の経済データの報道やグルメ・旅行など専門的であるが定型的な文章を書く記者・ライターなども、代替される可能性があるだろう」(小林氏)